JPMorganChase(以下、JPモルガン)はCharm Industrial(チャーム・インダストリアル)との既存提携を拡大し、バイオオイル圧入方式による炭素除去(CDR)カーボンクレジット61,500トンの追加購入契約を締結した。これにより同社間の累計購入量は90,000トンに達し、バイオオイル除去分野における二者間契約としては業界最大級の規模となる。
同時に、チャームのコロラド州における商業拡大を支援する2,000万ドル(約29億円)のベンチャーデット・ファシリティ契約も締結された。クレジット購入と成長資本供与を一体で組成した本件は、大手金融機関によるCDR市場関与のモデルケースとして注目される。
チャームは農業・林業由来のバイオマスを熱分解してバイオオイルを生成し、地下の地層に圧入することで炭素を永続的に隔離する生物起源炭素除去・貯留(BiCRS)を主要技術として展開している。コロラド州フォート・ラプトン施設では、山火事対策プロジェクトから発生する売却不能な森林残滓を原料として処理しており、炭素除去と地域の山火事リスク低減・雇用創出を組み合わせたコベネフィットを訴求している。
BiCRSは技術由来CDRの中でも永続性が高い手法とされる一方、熱分解・圧入オペレーションの規模拡大コストと、原料調達の安定性が商業化の鍵を握る。今回のデット供与は、熱分解・圧入設備の増強に充当される予定であり、スケールアップへの具体的な資本裏付けとなる。
JPモルガンのオペレーショナル・サステナビリティ責任者テイラー・ライト(Taylor Wright)は、「最初の購入時点からカーボンクレジットの品質評価と実質的なインパクト実現の手法を深化させてきた」と述べており、段階的な関与深化のプロセスを示唆している。
今回の取引構造が示す本質は、クレジット購入単体からの脱却にある。調達者が単に除去量を確保するだけでなく、CDRサプライヤーの事業成長に直接資本を投入する形態は、クレジットの安定供給確保と投資リターンの追求を同時に実現しうる。一方で、購入者と供給者の間に資本関係が生じることで、クレジット評価の独立性や利益相反への懸念が生じうるとの指摘もある。
チャームのCEOピーター・ラインハルト(Peter Reinhardt)は「洗練されたミッション志向の金融機関が、より大規模な2回目の購入を行いながら成長資本も投入するという構造は、我々が正しい方向に進んでいることの証左だ」と語った。
【編集部の視点】
本件はバイオオイル圧入CDRが資本市場から「投資対象として機能しうる資産」と認識され始めたことを示す事例と評価できる。
技術面では、BiCRSの永続性は地中貯留に依拠しており、DACCS等と同等の耐久性を主張できる技術経路だが、熱分解・圧入の産業的スケールへの移行が実証されたとまでは言い切れない段階にある。今回のデット供与はその移行を加速する資本として機能するが、商業規模での単位コストがどこに収斂するかは引き続き市場の評価を左右する論点となる。
金融モデルとしては、オフテイク契約とベンチャーデットを同一の金融機関が組成する構造が、CDR市場のバンカビリティを高める再現可能なパターンとなりうるかどうかが問われる。