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英国航空業界、CDR市場向け「先行市場シグナル」でNATSが50万ポンド投資

2026.06.10 読了 約4分
英国航空業界、CDR市場向け「先行市場シグナル」でNATSが50万ポンド投資
出典:<a href="https://www.nats.aero/news/nats-commits-to-invest-500k-in-carbon-removals-portfolio/" target="_blank">NATS</a>

英国の航空交通管制機関、ナッツ(NATS)は2026年6月9日、炭素除去(CDR)ポートフォリオへの50万ポンド(約9,500万円)の投資を発表した。

投資は、英国の航空業界団体サステナブル・アビエーション(Sustainable Aviation)が主導する200万ポンド規模の「先行市場シグナル(AMS:Advance Market Signal)」の一環として位置づけられている。AMSは、CDR市場の需要側を集団的に形成することで、技術開発・プロジェクトファイナンスの両面からスケールアップを促進する仕組みだ。サステナブル・アビエーションの参加メンバーには、エアバス(Airbus)、ブリティッシュ・エアウェイズ(British Airways)、ロンドン・ガトウィック空港、ヒースロー空港、ロンドン・ルートン空港、マンチェスター・エアポート・グループ、そしてNATSが名を連ねる。

ポートフォリオ構成

CDRポートフォリオのキュレーションと調達は、炭素除去市場の調査・デューデリジェンスを専門とするカー8(CUR8)が担当する。ポートフォリオは技術由来クレジットを中心に構成されており、地域・技術手法の分散を意識した設計となっている。

具体的には、インドのバイオ炭プロジェクトを手がけるカーボニアーズ(Carboneers)、メガトン規模の直接空気回収(DAC)施設の建設を進める1ポイントファイブ(1PointFive)、英国アボンマスで廃棄物由来の生物起源CO2を鉱物化して建材用炭素骨材を製造するO.C.O アボンマス(O.C.O Avonmouth)、そしてカナダの技術非依存型DAC開発企業ディープスカイ(Deepsky)が含まれる。ディープスカイのポートフォリオには、英国のDAC開発企業ミッション・ゼロ(Mission Zero)とエアハイブ(Airhive)の両社が手がけるモジュール型炭素回収ユニットも組み込まれている。

脱炭素戦略上の位置づけ

NATSは欧州の航空交通量の25%、空域の11%を管理し、2025〜26年には250万フライトを安全に処理した。同社はCDR投資を、2035年ネットゼロ・2040年カーボンネガティブという自社目標の中核的手段として位置づけており、太陽光発電設備の導入、エネルギー保全措置、車両の電動化、天然ガス廃止といった直接削減策と組み合わせて実施する方針を示している。

NATSのサステナビリティ・ダイレクター、イアン・ジョプソン(Ian Jopson)氏は「高度一体化されたインサイトとリスク評価に裏付けられたポートフォリオにより、高品質な炭素除去カーボンクレジットの確実な調達を期待している」とコメントした。

一方、NATSの今回の投資額50万ポンドは、200万ポンドのAMS全体に照らしても限定的な規模であり、CDR市場の実需創出という観点ではシンボリックな性格を持つとの見方もある。AMSが掲げる「市場形成」の実効性は、今後の参加企業の追加とコミットメント総額の積み上げによって評価されることになる。

編集部の視点

本件の核心はNATS単体の投資額ではなく、業界横断型のAMSというスキームにある。個別企業が単独でCDRポートフォリオを構築する場合に直面するデューデリジェンスコストや流動性リスクを、集団的なコミットメントと専門キュレーターの組み合わせによって低減する構造は、需要側の市場形成モデルとして参照価値が高い。

日本の航空・運輸セクターにとって示唆となるのは、個社ごとのクレジット調達から、業界団体が旗振り役となる集団購買・共同評価スキームへの移行可能性だ。国内では脱炭素目標の対外コミットメントが先行しているが、CDR調達の実行メカニズムは整備途上にある。英国AMSのような枠組みが、その空白を埋める一つのモデルとなりうるかどうかが、今後の論点となる。

参考:https://www.nats.aero/news/nats-commits-to-invest-500k-in-carbon-removals-portfolio/

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カーボンクレジット.jp 編集部
カーボンクレジット.jp編集部|2023年末に当時日本初かつ唯一のカーボンクレジット専門情報メディアを立ち上げ。高度な専門性とわかりやすさを追求した翻訳力。