米国の炭素回収・貯留(CCS)インフラ事業を手がけるサミット・カーボン・ソリューションズ(Summit Carbon Solutions)が、パイプ製造業者との1,500万ドル(約24億円)の契約紛争をめぐる訴訟で、デラウェア州において6月15日から3日間の審理に臨む。規制当局や地権者からの反発を受けてルートの大規模な見直しを迫られる中、サプライチェーン側の損害賠償請求がプロジェクトへの新たな圧力として重なっている。
争点は2023年に締結された約1億8,300万ドル(約293億円)規模のパイプ供給契約だ。中西部複数州のエタノール施設から地中貯留地点まで捕集CO2を輸送するネットワーク向けに、約785マイル分のパイプラインの製造・供給を内容としていた。
業界の報道によれば、プロジェクトが規制上の遅延と住民反発に直面する中でサミット社が製造スケジュールの延期を繰り返し求め、最終的に契約の解除を試みたとされる。パイプ製造業者側はキャンセル違約金1,500万ドルと調達済み資材の補償を請求しており、和解交渉が決裂したことで審理へと至った。サミット社は不正行為を否定している。
2026年5月13日、サミット社はアイオワ州公益事業委員会(Iowa Utilities Commission)に改訂ルートを申請した。アイオワ州のShelby、Pottawattamie、Montgomery、Adams、Page、Fremont、Mitchell、Worth各郡のルートを廃止し、Crawford、Floyd、Sioux、Dickinson各郡でもパイプライン延長を削減する内容で、合計約200マイルの縮減と400名超の地権者がフットプリントから除外される。アイオワ州内のエタノール施設については27拠点を継続対象としつつ、Absolute Energy、POET Corning、POET Hanlontown、Green Plains Shenandoahの4施設への接続は断念した。
今回の改訂で最も大きな戦略的転換点となるのが貯留先の変更だ。当初はノースダコタ州での地中貯留を想定していたが、業界の報道によればサウスダコタ州が許可申請を却下したうえ、炭素パイプラインへの土地収用を制限する立法措置を講じたことが根本的な見直しを迫った主因とされる。改訂案ではネブラスカ州を経由してワイオミング州に輸送・貯留する構成となり、サウスダコタ州を完全に迂回する。
一方でサミット社は、縮小後も事業の本質的な経済価値は損なわれていないとの立場だ。CEOのジョー・グリフィン(Joe Griffin)氏は「農業が経済的な圧力に直面している今、エタノール生産者が持続可能な航空燃料(SAF)を含む新市場で競争するためのインフラを構築することに意義がある」とし、縮小後もアイオワ州史上最大の民間インフラ投資との位置づけを維持する方針を示した。CO2利用(強化石油回収等)の補完的可能性についても継続評価するとしている。
改訂ルートはアイオワ州公益事業委員会の審査中であり、地権者団体や反対派は新規申請についても土地収用上の問題を指摘し、却下を求めている。
本件には「合理化」と「後退」という二つの解釈が同時に成立しており、どちらか一方に還元することが難しい局面だ。ルートの選択と集中はプロジェクト管理の観点から合理的であり、ワイオミング州の地質的貯留ポテンシャルを活かす新構成も機能的に成立しうる。他方、許認可取得の見通しが固まる前にサプライチェーンが動員され、それが具体的な損害賠償訴訟として顕在化したという事実は、大規模CCSインフラに内在する規制リスクとサプライチェーン契約の時間的ミスマッチを明確に示している。
この構造的課題はサミット社個別の問題にとどまらない。CCSインフラプロジェクトでは許認可プロセスが長期にわたるため、建設資材の調達タイミングと規制確認の完了時期のずれが、プロジェクト全体にわたる契約リスクとして蓄積する。競合他社が同様の地域から撤退した事実を踏まえれば、中西部における農業系CCSモデルは規制・地権者・法務の三方向からの摩擦を構造的に抱えているという評価が成立する。
ただし、ワイオミング転換後のルートが新たな規制障壁に直面しないか、残存27施設との接続計画が予定通り進捗するか、また縮小後の規模がプロジェクトの財務的持続性にとって十分かどうかは、現時点では未確認事項だ。
6月15日の訴訟審理結果と、アイオワ州公益事業委員会によるルート改訂への判断が、米国農業系CCSインフラモデルの実現可能性を左右する。
参考:https://www.summitcarbonsolutions.com/newsroom/may-13-update