2026年4月1日、デロイト トーマツ グループは、カーボンクレジットの評価・調達支援および森林モニタリングを主力事業とするサステナクラフト(Sustainacraft)の全株式を取得した。
同日付で社名をデロイト トーマツ サステナクラフト(以下、DTSC)へ変更し、デロイト トーマツの完全子会社として始動した。カーボンクレジット市場の品質要件が高度化するなか、大手コンサルファームによる専門スタートアップの取り込みは、日本企業の脱炭素移行戦略に直接影響を与える動きとして注目される。
DTSCは2021年10月の創業以来、カーボンクレジットの調達戦略策定から案件探索・リタイアメント(償却)までの一貫支援を手がけてきた。二国間クレジット制度(JCM)をはじめ、VCSやREDD+など多様なスキームに精通し、国内外のネットワークを活用した案件形成・評価の実務知見を有する。
技術面では衛星リモートセンシングを活用した森林モニタリングに強みを持ち、自然資本デューデリジェンスやプロジェクト評価における透明性・検証可能性の向上に貢献してきた。機械学習分野の難関国際会議であるNeurIPS 2022においてベストペーパーを受賞し、2025年にはNEDO Satellite Data Challengeで準優勝を収めるなど、エンジニアリング技術の水準は外部評価でも裏付けられている。
デロイト トーマツ グループは従来、脱炭素戦略、温室効果ガス(GHG)算定・削減ロードマップ、移行計画の策定など上流コンサルティングを提供してきた。今回のDTSC統合により、以下の領域で実行力が補完される。
カーボンクレジット調達の一気通貫支援
調達戦略の構想から案件探索・評価・リタイアメント(償却)・運用モニタリングまでをグループ内で完結させる体制を整備する。JCMやVCS・REDD+に関する国内外の制度対応も射程に入る。
森林・自然資本領域の高度化
衛星データを活用した自然資本デューデリジェンスとプロジェクトモニタリングを上流の戦略・ガバナンス設計と接続し、測定・報告・検証(MRV)の精度向上と信頼性担保を図る。
サプライチェーン可視化との連動
カーボンクレジットやサステナビリティ関連データをサプライチェーンマネジメント(SCM)システムと統合し、地政学リスクへの対応やサステナビリティ規制を踏まえた調達先確保を支援する。
人材育成・知見の組織横断展開:案件推進を通じて蓄積した実務知見をグループ横断で共有し、カーボンクレジット専門人材の育成にも取り組む。
日本のカーボンクレジット市場では、GX-ETS(排出量取引制度(ETS))の本格稼働を背景にコンプライアンス需要が拡大しつつあり、ボランタリーカーボンクレジット市場における品質要件も国際的に厳格化が進む。
今回のデロイト トーマツによるDTSC統合は、「戦略策定で終わる」コンサルから「実行・運用まで伴走する」体制への転換を示す事例であり、カーボンクレジットの追加性・永続性評価や衛星ベースの測定・報告・検証(MRV)高度化に自社単独では対応が難しい大企業にとって、外部専門リソースの活用モデルとして参照価値が高い。
Scope 3排出量の可視化とカーボンクレジット調達をSCMと統合する方向性は、今後の日本企業の脱炭素移行計画策定において標準的アプローチとなる可能性がある。
参考:https://www.deloitte.com/jp/ja/about/press-room/nr20260401.html