株式会社バイウィルと三井住友海上火災保険株式会社は2026年4月22日、電気自動車(EV)の導入による脱炭素効果をJ-クレジットとして創出するプログラム型プロジェクト「EVラボ」について、第68回認証委員会で登録が完了したと発表した。
両社の資本業務提携を背景に組成された本プロジェクトは、EVオーナーの日常的な走行を通じた温室効果ガス(GHG)排出削減量を集約し、J-クレジット制度のもとで国の認証を取得することを目指す。
「EVラボ」は、EV1台ごとの個別申請ではなく、複数のEVオーナーをパッケージ化して一括認証を取得するプログラム型の枠組みを採用している。三井住友海上が保有する自動車保険契約者を中心とした広範な顧客基盤と、バイウィルが全国に展開するパートナーネットワークを掛け合わせ、対象車両を継続的に積み上げる構造である。
EV走行に伴う排出削減量は、ガソリン車との比較に基づくベースラインアンドクレジット方式で算定される。J-クレジット制度の分類上は削減系クレジットに位置付けられ、化石燃料消費の回避によるCO2排出削減を価値化する設計である。
本プロジェクトにおいてバイウィルが担う役割は、大きく2つに分かれる。
第一に、J-クレジット創出に関わる実務支援である。プロジェクト計画の策定、モニタリング、第三者機関による審査対応など、J-クレジット制度のもとで求められる手続きは煩雑かつ専門性が高い。バイウィルは、EV導入による排出削減効果の取りまとめからレジストリ(登録簿)への登録、認証取得までを一気通貫で支援する。
第二に、創出されたカーボンクレジットの販売である。バイウィルが構築してきた需要家企業との販売ネットワークを通じて、認証されたカーボンクレジットを脱炭素経営を進める企業に供給する。創出されたカーボンクレジットは、購入企業のカーボンオフセットや、Scope1・Scope2排出に対する削減対応として活用される想定である。
国内のJ-クレジット制度は、再生可能エネルギーや省エネ設備導入を中心に拡大してきたが、運輸部門におけるEV由来の方法論は近年整備が進んだ領域である。軽商用EVのラインナップ拡充や企業のフリート導入が加速する中、EV走行から得られる脱炭素価値をカーボンクレジットとして経済価値に転換する仕組みは、運輸部門の脱炭素化に新たな資金循環をもたらす可能性がある。
両社は今後、EV以外の方法論についても同様のスキームでカーボンクレジット創出を拡大していく方針を示している。
EVを対象としたプログラム型J-クレジットの登録は、運輸部門におけるカーボンクレジット創出の裾野を広げる動きとして注目される。とりわけ、損害保険会社の顧客基盤を活用してEVオーナーから排出削減量を集約するモデルは、個人や中小事業者が単独では参入困難なJ-クレジット創出のハードルを下げる設計といえる。
日本企業にとっては、Scope1排出に対するオフセット用カーボンクレジット調達手段の選択肢が増える一方、GX-ETSの本格稼働を見据えて、削減系・国内由来のカーボンクレジットの需給バランスがどう推移するかが論点となる。