カタールを拠点とする国際的なカーボンクレジット認証機関GCC(Global Carbon Council)は、国際林業研究・世界アグロフォレストリーセンター(CIFOR-ICRAF)と覚書(MoU)を締結した。高品質な自然に基づく解決策(NbS)の展開を加速し、炭素市場の環境十全性を強化することを狙いとする。
両者はボランタリー市場と規制市場の双方を対象に、国際的なアウトリーチ、政策対話、技術支援を共同で進める。CIFOR-ICRAFが森林・樹木・アグロフォレストリーに関する科学的知見を提供し、GCCが認証の技術・規制枠組みを担う役割分担である。
科学研究を認証枠組みに接続する設計
CIFOR-ICRAFはCGIARシステムに属し、90カ国超で活動する林業・アグロフォレストリー分野の研究機関である。今回の提携では、同機関の科学データと専門知見を、GCCのベースライン方法論およびMRVの枠組みに反映させる。
対象は陸域生態系にとどまらず、泥炭地やマングローブを含む沿岸湿地にも及ぶ。
GCCの創設会長を務めるユセフ・アルホール氏(Yousef Alhorr)は、公的・民間の双方が自然資本へ確信を持って投資するための透明性と技術的保証の構築を提携の中核に据えると説明し、MENA地域をはじめとする各地の生態的・社会的条件を反映したベースライン方法論を開発する方針を示した。CIFOR-ICRAFのエリアン・ウバリジョロ氏(Eliane Ubalijoro)も、グローバルサウス発の科学と解決策を炭素市場の設計に反映させる意義を強調している。
30対1の資金不均衡を訴求する背景
提携の背景には、自然資本へ向かう資金の構造的な偏りがある。国連環境計画(UNEP)が2026年に公表した自然資金に関する報告書によれば、2023年に自然を毀損する方向へ流れた資金は7兆3,000億ドル(約1,170兆円)に達し、NbSに振り向けられた2,200億ドル(約35兆円)を30対1以上の比率で上回った。
ただし、この30対1という対比は、資金再配分の必要性を示す訴求として機能する一方、今回の提携が直接動かす資金規模を示すものではない。
提携ラッシュの中でのポジショニング
GCCにとって、今回のMoUは森林NbS領域での一連の提携の延長線上にある。過去18カ月の間に、同機関は韓国山林庁、アジア森林協力機構(AFoCO)、マレーシア森林基金と相次いで協力枠組みを構築してきた。
こうした動きを支えるのが、ICVCMのコアカーボン原則(CCP)に基づくプログラム承認である。GCCは2026年に同承認を取得し、複数の方法論もあわせて認定された。承認済みプログラムは現時点で限られており、GCCはその一角に加わったかたちだ。
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グローバルサウス発の認証機関として、GCCは中東・アジア・アフリカの森林NbS供給を取り込みながら、既存の主要標準とは異なる地理的基盤でポジショニングを進めている。森林系の方法論がCCP承認の対象として広がりつつある流れとも軌を一にする。
編集部の視点
本件は、GCCによる森林NbS領域での提携ラッシュの一環であり、単独で市場の転換点を成すものではない。
ICVCMのCCP承認を取得したGCCは、グローバルサウスという地理的基盤を軸に、既存の主要標準とは異なる供給源を押さえにいっている。科学研究機関との接続は、その供給に環境十全性の裏づけを与えるための布石と読める。
ただし現時点で締結されたのは覚書であり、方法論の実装や実際のカーボンクレジット発行を伴うものではない。30対1という資金不均衡の提示も、提携の具体的スコープと結びついた数値ではない。
グローバルサウス標準としてのGCCの実効的なポジションは、CCP承認後の方法論運用と発行実績がどこまで伴うかに左右される段階にある。
