ベトナム気候変動局(DCC)は、2026年6月29日にハノイ証券取引所で国内初となるカーボンクレジット取引所を正式に稼働させた。取引所は火力発電、鉄鋼、セメントの3セクターを対象とする排出枠取引を主軸としており、企業は排出枠を超過した分の一部をカーボンクレジットで補うことができる仕組みとなっている。
Green Carbonは、取引所開設に先立つ6月12日にホーチミン市で開催されたカンファレンスに登壇し、ベトナム農業分野におけるカーボンクレジット創出の可能性と課題を提起した。
Green Carbonはベトナムで間断灌漑(AWD)技術を用いた稲作からのメタン排出削減に取り組んでいる。2024年8月の現地事務所設立以降、メコンデルタ地域を含む15省の当局と覚書を締結し、パートナーシップを広げてきた。
カンファレンスにはGreen Carbonベトナム支社の事業開発マネージャーであるファン・ティエン・タインが登壇し、国際基準に準拠したMRV体制の構築、プロジェクト書類の整備、海外カーボンクレジット購入者とのマッチングといった、現場の民間事業者が直面する課題を共有した。同社は今後、ベトナム全土191,000ヘクタール規模のプロジェクトを展開し、カーボンクレジット600,000トンの創出を目指すとしている。
取引所稼働の背景には、2024年に公布された政令112/2024/ND-CPによる国際カーボンクレジット取引の法的枠組み整備がある。もっとも、現時点で取引所が扱うのは排出量の大きい産業セクターの排出枠であり、農業由来のカーボンクレジットが取引の中心を占める段階には至っていない。
CBAMやCORSIAの適用拡大に伴う高品質カーボンクレジットの需要増を踏まえ、Green Carbonは市場インフラの整備が農業分野への民間参入をさらに後押しすると見ている。
取引所稼働はベトナムのコンプライアンス市場整備がひとつの到達点に達したことを示すものであり、農業由来カーボンクレジットの本格的な取引拡大はこの先の制度拡張にかかっている。
Green Carbonが挙げたMRV体制の構築や購入者とのマッチングといった実務課題は、農業セクターが取引所の対象に組み込まれる段階で実際に立ちはだかる障壁になるはずだ。
参考:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000283.000117956.html