カナダ政府は、アルバータ州が提案する西海岸向け原油パイプライン計画をMajor Projects Office(MPO)に付託し、Building Canada Act上の国家的重要プロジェクトとしての指定手続きを開始した。同時に、連邦政府とアルバータ州はオイルサンドアライアンス(Oil Sands Alliance)との間で、炭素回収・貯留(CCS)を柱とするパスウェイズ・プロジェクトの建設推進について合意した。
パイプラインは日量100万バレルの原油輸送能力を持ち、既存のTrans Mountain回廊を踏襲するルートを取る。開発主体はトランス・マウンテン(Trans Mountain Corporation)、民間出資者としてペンビナ・パイプライン(Pembina Pipeline Corporation)が参画する。カナダ・アルバータ両政府が対等出資し、先住民には持分参与の枠が設けられる。
パスウェイズ・プロジェクトは年間1,600万トンの排出削減を掲げ、世界最大級のCCSネットワークの一つと位置づけられる。両プロジェクト合計で約17万5,000人の雇用創出が見込まれるという。
今回の発表は、2025年11月のカナダ・アルバータ間の覚書と、2026年5月15日のImplementation Agreementの延長線上にある。両政府はメタン排出の75%削減(2014年比、2035年目標)や環境影響評価の迅速化についても既に合意しており、今回のパイプライン付託とCCS建設着手は、その枠組みを具体的な事業実行段階に移す動きである。
政策設計として注目すべきは、輸出インフラの拡大とCO2排出削減目標の達成を一体のパッケージとして提示している点である。パイプラインの迅速な許可プロセスを進める政治的正当性を、パスウェイズによる大規模排出削減の実績に依存させる構図と言える。一方で、輸出量そのものが拡大する以上、上流の排出削減だけでは全体の気候影響を相殺しきれないとの指摘もある。
パスウェイズ・プロジェクトは資金調達や最終投資判断の枠組みが過去に何度も見直されてきた経緯があり、今回の合意でも着工に向けた具体的な資金構成や工程は明示されていない。
カナダ政府は同日、ブリティッシュコロンビア州政府ともCooperative Prosperity Agreementに署名し、同州内のエネルギー・貿易インフラ整備を加速する方針を示した。MPOはこれで計23件のnation-building案件を推進しており、投資総額は1,350億ドルを超える。
今回の発表は、2025年11月の覚書以降積み上げてきた合意の実務展開であり、単体としての新規性は限定的である。焦点はむしろ、パイプライン拡大とCCSによる排出削減目標を同一の政策パッケージとして提示した設計そのものにある。輸出拡大の政治的正当性を炭素回収の実績に依存させる構図であり、パスウェイズの着工と実行が計画通り進むかどうかが、この枠組み全体の説得力を左右する。