カナダ政府は、ASEAN(東南アジア諸国連合)のCCUS基盤整備を支援するため、138万カナダドル(約1億5,700万円)の無償資金を拠出する。資金はASEAN-カナダ信託基金を通じ、域内のエネルギー協力を担う政府間機関のASEANセンター・フォー・エナジー(ACE)に配分される。
拠出の狙いは、越境でのCCUS協力の検討と、展開可能性の整理にある。個別プロジェクトへの投資ではなく、技術面と制度面の土台づくりを対象とした初期段階の資金である。
カナダは別枠で、アジア開発銀行(ADB)が運用する多国間基金に200万カナダドル(約2億2,800万円)を拠出し、ASEAN電力網の整備を支える。加盟国の電力系統を相互接続する広域構想である。
カナダ・インド太平洋担当次官補のウェルドン・エップ(Weldon Epp)によれば、今回の初期資金は越境CCUS協力の検討と展開機会の特定に充てられる。
産業由来のCO2回収を域内で広げるには、相互接続された強靭な電力網が前提になる。CCUSと電力網を一体で支援する設計には、こうした認識がある。
ASEAN事務総長のカオ・キム・ホーン(Kao Kim Hourn)は、カナダとの連携を、従来型とクリーン双方のエネルギー分野で確立した西側の専門知を取り込む戦略的判断と説明している。カナダはCCUSの早期導入国であり、今回の拠出はインド太平洋におけるカナダの技術外交の一環に位置づく。
ASEANは現在11カ国で構成され、歴史的に世界のGHG排出の約4.75%を占める。石炭と天然ガスが域内電源の中核を占めるなか、域内の首脳はCCUSを脱炭素の不可欠な手段とみなしている。
インドネシアは2030年までに15件以上のCCSおよびCCUSのプロジェクト稼働を計画する。国家目標にカナダの技術支援を接続することで、初期段階のプロジェクトのリスクを下げ、より大規模な機関投資を呼び込む狙いがある。
一方で、138万カナダドルという規模は、域内が掲げるCCUSの位置づけに照らせば象徴的な水準にとどまる。
実際の展開には、商業投資家や多国間金融からの後続資本が前提となる。
本件は、カーボンクレジットや炭素市場の動きというより、カナダによるインド太平洋の技術外交として読むのが妥当である。CCUSとASEAN電力網の双方に資金を配したのは、産業排出の管理を電力インフラの整備と一体でとらえる設計の表れといえる。
ただし現時点の拠出は制度設計の足場づくりにとどまる。西側の導入実績をASEANの初期段階に接続したこの関与が、域内のCCUS方法論や制度の方向づけにどこまで及ぶかが、枠組みの実質的な論点となる。
参考:https://w05.international.gc.ca/projectbrowser-banqueprojets/project-projet/details/p011489001