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CCS事業法の全面施行と支援措置案 脱炭素価値の制度化が次の焦点

2026.06.29 読了 約4分
CCS事業法の全面施行と支援措置案 脱炭素価値の制度化が次の焦点
出典:イメージ

二酸化炭素の貯留事業に関する法律(CCS事業法)が2026年5月22日に全面施行され、貯留事業と導管輸送事業に関する規定が動き出した。これを受け、6月26日に開かれた資源エネルギー庁のカーボンマネジメント小委員会は、パイプライン案件を対象とする支援措置の中間とりまとめ案を示した。

2030年代初頭の事業開始という政府目標に向け、制度の土台と投資を促す枠組みがそろった。残る焦点は、CCSが生む削減価値をどう測り、市場で訴求できるようにするかにある。

支援措置の骨子

コスト差支援措置の輪郭が固まった。基準価格はCO2トンあたりの分離回収コストと輸送貯留料金の合計とし、参照価格は排出量取引制度の取引価格の平均を基本とする。両者の差を、貯留したCO2量に応じて支援する仕組みである。

支援期間は15年、その後に分離回収事業者と輸送貯留事業者の双方へ課す事業継続義務期間は10年とした。コスト差支援を導入する英国とオランダの支援期間も15年であり、これに倣っている。

当初の中間整理では、輸送貯留料金をオークションで決める方針だった。今回はこれを取り下げ、分離回収コストと同じく適正性審査で決める方式へ切り替えた。入札に参加する事業者が限られ競争による価格低減が働きにくいこと、貯留方法やパイプライン延長といった案件固有の条件で輸送貯留コストが大きく変わることが理由である。

参照価格に据えた炭素価格

支援の設計で目を引くのは、参照価格に排出量取引制度の取引価格を置いた点である。CO2を排出した際の対策費用を炭素価格で代表させ、CCSコストとの差額を埋める構図となる。GX-ETSの価格形成が、CCS事業の採算を左右する変数として支援制度に組み込まれた。

CCSの脱炭素価値を訴求する仕組みや市場の形成は、支援期間後の自立化の前提である。中間とりまとめ案は支援期間を15年とする根拠の一つに、こうした市場が立ち上がるまでに時間を要する点を挙げている。

SHK制度のカウントルール

CCSによる削減を排出量算定でどう扱うか。温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度(SHK制度)におけるカウントルールは、2026年3月から算定方法検討会で議論が始まった。

論点は、削減価値をどの時点で何をもって生じるとするか、漏洩をどう位置づけるか、ダブルカウントとカウント漏れをどう防ぐかにある。CCS事業の振興と貯留行為の評価を両立させるルールをどう設計するかが問われる。算定の物差しが定まらなければ、参照価格に炭素価格を据えても、事業者が手にする価値は確定しない。

J-クレジットとCDRの接点

環境価値の制度化はCCUにも及ぶ。コンクリートへCO2を固定した分をJ-クレジット化する方法論の策定が進み、年度内の策定を目指している。固定量の評価手法はJIS化を年度内に、ISO化を2027年度に見据える。

バイオエタノール工場由来のCO2を回収・貯留するBECCSは、除去系の性質を帯びる。海外では除去系カーボンクレジットとして販売する例も出ており、CCSの一部はボランタリーカーボンクレジット市場のCDRと接続しうる。国内のCCS事業がどこまでこの市場に乗るかは、上記のカウントルールと方法論の整備しだいとなる。

動き出した国内外の事業

現場の歩みも続く。特定区域に指定された北海道苫小牧市沖では、石油資源開発(JAPEX)が2026年1月に試掘を始めた。千葉県九十九里沖では、首都圏CCS(INPEXと関東天然瓦斯開発の合同会社)が4月に試掘の許可を得ている。

国外では、ロンドン議定書改正の暫定適用により、一定の条件下でCO2の輸出が可能になった。マレーシアとの越境CCS協力も、覚書の署名から実務協議の段階へ進んでいる。

編集部の視点

法の全面施行と支援措置案によって、CCS事業を始めるための土台はおおむね整った。今回の一連の動きでより重いのは、設備や資金の枠組みよりも、CCSが生む削減価値を制度として測り始めたことのほうである。

参照価格への炭素価格の採用と、SHK制度のカウントルール検討の開始は、その第一歩といえる。もっとも、削減価値の定義、漏洩の扱い、ダブルカウントの防止はいずれも緒に就いたばかりで、CCSの環境価値がカーボンクレジットや市場価値として確立するかはなお見通せない。事業の自立化は、この価値訴求の仕組みが立ち上がるかどうかに左右される。

参考: https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/shigen_nenryo/carbon_management/011.html

関連タグ CCS
カーボンクレジット.jp 編集部
カーボンクレジット.jp編集部|2023年末に当時日本初かつ唯一のカーボンクレジット専門情報メディアを立ち上げ。高度な専門性とわかりやすさを追求した翻訳力。