ノルウェーの国営エネルギー機関エノヴァ(Enova)は、産業由来のCO2を対象とする炭素回収・貯留(CCS)の支援にオークション型の制度を導入すると発表した。国会が今年度予算で計上した最低7億クローネ(約116億円)を初回の公募枠とし、気候・エネルギー基金からの追加拠出も可能とする。あわせて、CO2受入ターミナルへの投資支援を新設し、これまで貯留へのアクセスが限られていた中小規模の排出者の参入を後押しする。
初回オークションは2026年秋から2027年初頭を見込むが、実施時期はEEA協定の監視機関であるEFTA監視機構(ESA)による制度承認に左右される。
エノヴァのルーネ・ホルメン(Rune Holmen)代表代行は、同機関の支援対象が回収技術のコスト精査や小規模実証から、大幅な排出削減を見込む大規模投資へと移行すると説明した。オークション型を採る狙いは、競争を通じた資金の効率的配分にある。エノヴァは2024年以降、CCSの前段プロジェクト15件を支援し、本格投資への移行準備を進めてきた。
本制度は、2024年に国会が産業・廃棄物分野でのネガティブエミッション達成を目的として支援プログラムのオークション設計を求めた決議に連なるものであり、技術中立を掲げて多様な回収手法に開かれている。ネガティブエミッションを企図する一方で、産業点源からの回収も対象に含むため、除去(CDR)に限定した枠組みとは言い切れない。
報道では制度全体の予算上限を最大17億ユーロ(約3,155億円)とする向きもあるが、一次資料が明示するのは初回公募の7億クローネと基金からの追加拠出にとどまる。
新設される受入ターミナル支援は、トラックによるCO2搬入を可能にする点に特徴がある。現行の船舶輸送は相応の取扱量を前提とするため、中小規模の事業者は事実上、地中貯留の利用から排除されてきた。
ターミナルの整備は、これらの事業者の貯留アクセスを大きく簡素化し、輸送コストの低減にも資する。ノルウェー環境庁は、CCSを2035年に向けた国内最大の排出削減手段と位置づけており、廃棄物焼却施設では排出削減の唯一の選択肢、多くの産業排出者にとっては最安の手段だとしている。
一方で、CCSの商業化が想定より遅れているとの見方も根強い。同じノルウェーのエクイノール(Equinor)は需要シグナルの不透明さを理由に低炭素事業の投資を縮小しており、補助による供給側の整備が需要の立ち上がりと噛み合うかは依然として読みにくい。
今回の制度は、欧州初の統合型CCSバリューチェーンとされるロングシップ(Longship)の稼働に続く動きであり、国家が初期リスクを引き受けて商用利用を促す従来路線の延長線上にある。
今回の発表は、ノルウェーのCCS政策が個別プロジェクトへの補助から、競争原理に基づく制度的な資金配分へと移行する局面として位置づけられる。
その制度設計上の核心は、オークションによる価格規律と、受入ターミナルを通じた参加者裾野の拡大という二つの設計思想にある。前者は補助単価の抑制を通じて公的資金の効率を高め、後者はトラック搬入という物流要件の緩和によって、これまで規模の壁に阻まれてきた中小排出者を制度の対象へと組み込む。ただし初回オークションの始動はESAの承認時期に依存しており、制度が機能するか否かはノルウェー国内の設計よりも外部の承認プロセスに左右される論点となる。
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参考:https://kommunikasjon.ntb.no/pressemelding/18912115/enova-med-storsatsing-pa-karbonfangst?lang=no