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EU理事会、CBAMの一時停止要件を厳格化 対象を川下製品へ拡大

2026.06.16 読了 約4分
EU理事会、CBAMの一時停止要件を厳格化 対象を川下製品へ拡大
出典:イメージ

欧州連合(EU)理事会は2026年6月12日、炭素国境調整メカニズム(CBAM)の強化に関する一般アプローチ(理事会ポジション)を採択した。CBAMの適用を一時停止できる条件を厳格に限定するとともに、適用対象を鉄鋼・アルミニウムを多用する川下製品へ拡大する内容である。

現行のCBAMは2026年1月に本格運用が始まったばかりであり、今回の措置は2025年12月の欧州委員会による強化提案を受けた立法手続きの一段階に位置づけられる。理事会ポジションは、欧州議会との三者協議に向けた交渉基盤となる。

一時停止要件の厳格化

欧州委員会の当初提案は、「重大かつ予見不能な事情」が域内市場に深刻な損害をもたらす場合に、対象品目をCBAMの枠組みから一時的に除外できる手続きを規定していた。理事会ポジションはこの除外権限の境界を明確化し、発動は明確かつ客観的な基準に基づくべきだとした。

合意文書で示された基準では、対象品目の価格が過去10年平均比で6カ月間に50%を超えて上昇した場合に限り、欧州委員会が一時停止を提案できる。

「予見不能な事情」という裁量的な文言には、低炭素投資にとって不確実性を生むとして一部の政府や企業から異論が出ていた。域外の高排出品が確実にCBAMの課金対象であり続けることを前提に成立する投資が、停止条項によって採算の前提を崩されかねないためである。

反循環措置と対象品目の拡大

理事会は反循環措置についても、欧州委員会の当初提案におおむね同意した。消費前の金属スクラップをCBAMの対象に加えるとともに、高リスク企業の報告に欺瞞的な行為が認められた場合に欧州委員会が対処する権限を新設する。

対象品目の拡大では、鉄鋼・アルミニウムを多用する川下製品が新たに加わる。洗濯機や自動車部品などの消費財が含まれ、理事会は適用対象とする新規品目のリストを精査した。あわせて、将来追加しうる川下製品について欧州委員会に年次レビューの実施を義務づけた。

現行のCBAMがほぼ原材料のみを対象としてきたため、鉄鋼・アルミニウムなどのCBAM対象品を多く用いて製造されるEU域内製品が、域外での排出増加を招きつつ、EU ETSの対象となる同種のEU製品を置き換えるリスクが生じていた。対象品目の川下への拡大は、このカーボンリーケージへの対応である。

加盟国間の対立と妥協

採決は多数決で可決されたが、スロバキア・ルーマニア・リトアニアは国内経済への影響を懸念して支持を見送った。

フランスは当初、肥料への課金を一時停止するよう強く求めていた。海外県グアドループとマルティニークのセメント輸入について、自然災害などの緊急時に課金を回避できる例外を確保したうえで、最終的に合意を支持した。

一方、欧州議会は一時停止条項の縮小、ないし全廃を志向している。議会のポジションは9月の本会議で正式採択される見通しで、その後の三者協議を経て年内の最終合意を目指す。停止条項を厳格化したうえで維持する理事会と、踏み込んだ縮小を求める議会との間で、最終的な制度設計は交渉に委ねられる。

編集部の視点

今回の理事会ポジションの核心は、CBAMの実効性を左右してきた一時停止条項に、客観的な発動基準を課した点にある。

「重大かつ予見不能な事情」という裁量的な文言は、価格急騰時の政治的圧力に応じて課金が停止されうる余地を残し、制度の予見可能性を損なう要因となってきた。発動要件を定量基準へと具体化する今回の措置は、CBAMを政治判断に左右されにくい制度へと近づける調整として位置づけられる。

低炭素投資の採算は、域外の高排出品が同等の炭素コストを負担し続けることを前提に成り立つ。一時停止の不確実性を縮小する制度設計は、こうした投資の予見可能性を支える基盤となる。ただし欧州議会が停止条項の全廃まで視野に入れるなか、最終的な制度の堅牢性は三者協議の帰結に委ねられる論点として残る。

関連記事:EU、CBAMの炭素価格をEU ETSに正式連動 2026年第1四半期はCO2換算1トンあたり75.36ユーロでスタート

参考:https://www.consilium.europa.eu/en/press/press-releases/2026/06/12/council-moves-to-strengthen-the-eu-s-carbon-border-adjustment-mechanism/

関連タグ CBAM 欧州
カーボンクレジット.jp 編集部
カーボンクレジット.jp編集部|2023年末に当時日本初かつ唯一のカーボンクレジット専門情報メディアを立ち上げ。高度な専門性とわかりやすさを追求した翻訳力。