MODECとノルウェーのエルドエナジー(Eld Energy)は、固体酸化物形燃料電池(SOFC)とCCSを統合した1.2MW級発電システムをFPSO(浮体式生産貯蔵積出設備)向けに共同開発する覚書(MoU)を締結した。洋上の石油・ガス生産設備が抱える電源そのものを脱炭素化する試みであり、2029年に1.2MWユニットの陸上試験を予定する。
覚書は、ノルウェーのホーコン皇太子の訪日に合わせ、同国の漁業・海洋政策相の同席のもと東京で署名された。
覚書のもと、エルドエナジーがSOFCを基盤とする発電システムの設計・調達・建設および試験・検証を主導し、MODECがCCS設備の開発とFPSOへのシステム統合を担う。陸上試験の後、実運用条件下での性能を評価する長期実証へ移行する計画である。
両社の協業は2025年に始まり、洋上向けSOFCシステムを40kWから120kW級へと段階的に拡張しつつ、CCSのパイロットを並行して進めてきた。今回の1.2MW級は、その実績を踏まえ商用規模への移行を見据えた段階に位置づけられる。
SOFCは高温下で燃料の化学エネルギーを電気へ直接変換する発電方式であり、従来型の発電に比べて高い効率と多様な燃料への対応力を備える。これにCCSを組み合わせることで、FPSOに求められる連続的かつ安定した電力供給を損なうことなく、船上発電からの排出を大幅に削減できる構成を狙う。
洋上という制約下では、発電設備の効率と稼働率を犠牲にできない点が脱炭素化の最大の障壁となる。両社は、高効率発電と回収を一体で設計するこのアーキテクチャを、ゼロエミッションFPSOへ向けた現実的な経路と位置づける。
本件は船上発電の排出を対象とするCCS案件であり、CDR系カーボンクレジット市場とは独立した文脈で評価する必要がある。回収したCO2の処理先は今回の覚書では示されていない。
洋上発電の脱炭素化は、効率と稼働率を犠牲にできないという制約から実装の難所とされてきた。高効率なSOFCと回収を初期設計の段階から一体化する本件の構成は、既存設備への後付け対策とは性質を異にする発電アーキテクチャの提示であり、FPSO電源の脱炭素化における構造的な前進といえる。
40kWから1.2MWへの段階的な実績の積み上げと、商用規模を見据えた実証計画は、この統合構成の実用性を検証する具体的な道筋となる。技術アーキテクチャとしての成立性が、洋上発電向けカーボンマネジメントの実装可能性を左右する。
参考:https://www.modec.com/news/2026/20260604_pr_MoU_Eld-Energy.html