消費者向けクライメートファイナンスアプリを運営するコモンズ(Commons)が、過去最大規模となる調達サイクルを始動した。炭素除去(CDR)およびスーパーポリュタント削減カーボンクレジット合計10万トン超の取得を目標に、プロジェクト開発者からの関心表明(EOI)を受け付けている。
今回の公募は、東南アジア、中南米、カリブ海流域、その他島嶼部での運営プロジェクトを優先対象とする。コモンズはこれまでの5年間で、冷媒破壊、バイオ炭、土壌炭素、河川アルカリ度強化、岩石風化促進(ERW)、地中バイオマス貯留、直接空気回収(DAC)、マングローブ、森林管理の9経路でポートフォリオを構築してきた。
今回の公募で新たに重点対象として挙げられているのは、海洋系CDR、海洋性原料由来のバイオ炭、マングローブ・海草の再生、地下バイオマス除去・貯留、鉱化(ミネラリゼーション)、メタン削減の6領域である。既に最初の検証済みカーボンクレジットを発行済みか、今年中の発行を見込むプロジェクトが対象となる。
応募プロジェクトに対しては、科学的根拠に基づく測定可能な解決策であること、永続性に関する確実性を持つこと、保守的かつデータに裏付けられた測定手法を採用していること、リーケージおよびリバーサルリスクの厳密な定量化を行っていることが求められる。
また、生態系および地域コミュニティの長期的利益と整合したカーボン成果であること、コアカーボン原則(CCPs)の承認取得済みまたは承認経路上にある方法論を採用していること、レジストリ(登録簿)への透明性ある移転・リタイアメントの実施、マイルストーン・是正措置・クレジット独占所有権を定義した契約の締結が条件として明示されている。
今回の公募が示すのは、海洋系CDRや鉱化といった新興経路への需要が、実需レベルで動き出したという事実である。これまで研究・実証段階にとどまっていた経路に対して、調達側が具体的な品質要件と契約条件をセットで提示したことは、供給側の方法論整備を促す圧力として機能する。
同時に、ICVCMのコアカーボン原則準拠を調達要件に明示したことは、ボランタリーカーボンクレジット市場における品質基準の事実上の底上げとして読める。調達量10万トンという絶対規模は市場全体への影響という点では限定的だが、消費者向けプラットフォームがここまで踏み込んだ品質要件を公募ドキュメントに落とし込んだことの意義は、規模の議論とは切り離して評価すべき論点となる。