株式会社ドリブンテクノロジーズ(IJTTグループ)は2026年5月15日、神奈川県内海域で創出されたブルーカーボンクレジット合計19.7トンを取得したと発表した。城ヶ島海域由来11.1トン、江の島海域由来8.6トンで、いずれもJブルークレジットとして認証されたものを購入した。
取得分は同社の事業活動に伴うCO2排出量のオフセットに加え、2026年6月に横浜市桜木町近郊で開設予定の新オフィス運営に伴うCO2排出量の実質100%相当オフセットに充当する計画である。新オフィスはIJTTグループにとっての協創・イノベーション創出拠点として位置付けられている。
IJTTグループは鋳造・鍛造を中核とする輸送用機器製造業者であり、近年は鋳造工程で発生する鉱さい等の副産物を活用した海洋資材開発を進めている。神奈川県内では産学官連携のもと、藻場再生に関する実証事業を推進し、海洋資材を用いた藻類の成長促進に関する技術検証を行っている。
今回のブルーカーボンクレジット取得は、こうした実証事業との連動を意図したものと位置付けられる。同社は「製造業の副産物活用→藻場再生→CO2吸収→クレジット化→事業で活用」という循環型の価値創出モデルを掲げ、地域内で環境価値を創出・活用するブルーカーボン循環モデルの構築を目指すとしている。
将来的には実証事業を通じて創出される環境価値自体のクレジット化も視野に入れる。製造業の副産物処理という供給側のコストセンターを、藻場再生という生態系修復に転換し、その成果をブルーカーボンクレジットとして事業価値に還元する設計である。
神奈川県では従来、藻場のCO2吸収量測定は潜水士による調査に依拠してきたが、自律航行する水中ドローンとAI技術を活用した藻場モニタリング手法が開発された。同手法によるCO2吸収量は国内で初めてJブルークレジットとして認証されている。
潜水士による測定は人件費・安全管理・調査範囲の制約から大規模展開に課題があった。dMRV手法への移行は、ブルーカーボンクレジット創出のコスト構造と測定精度を変える可能性を持つ。
今回取得した19.7トンは、IJTTグループ全体の事業規模(2025年3月期連結売上高1,561億9,500万円、従業員4,619名)と比較すると象徴的な水準にとどまる。用途も主要製造拠点ではなく、2026年6月開設予定の協創拠点としての新オフィス運営に絞られている。
一方で、本件は神奈川県政策局のエンドースメントを伴っており、単独企業のオフセット案件というより、県内ブルーカーボン市場の立ち上げに向けた先行事例としての性格を併せ持つ。
製造業×海洋分野の循環モデルとしての方向性は示されたものの、現時点では象徴的な取り組みの域を出ない。19.7トンというオフセット規模はグループ全体の排出量に対して微小であり、用途も新オフィスという協創拠点の運営に限定されている点を踏まえれば、本件は事業活動全体の脱炭素化手段ではなく、地域連携とブランディングを兼ねたパイロット案件と位置付けるのが妥当である。
ただし、地域型ブルーカーボン市場の立ち上げ局面においては、こうした先行事例の蓄積自体に意義があるという見方もできる。製造業の副産物処理と海洋環境再生を接続する設計は概念として明快であり、実証事業から創出される環境価値が将来的にクレジット化されれば、循環モデルの実効性は検証可能な段階に進む。本件の評価は、19.7トンという初動規模ではなく、後続する実証事業の成果と規模拡大の有無によって定まる。
参考URL:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000004.000179937.html