ティッセンクルップ・マリン・システムズ(TKMS)と、独立部門としてスピンアウトしたティッセンクルップ・カルビオン(thyssenkrupp Calvion)は、米エアルーム・カーボン・テクノロジーズ(Heirloom Carbon Technologies)と2件のMoUを締結した。カナダ・アルバータ州で大規模DACハブの構築を進める。
TKMSは同ハブに多額の投資をコミットし、高品質なCDRクレジットと低炭素燃料の原料を供給するサプライチェーンの整備を構想する。
2件のMoUは、研究・技術移転・商業化に向けた枠組みを定めるものである。エアルームの石灰石ベースDAC技術に、カルビオンのエンジニアリング、スケールアップ、大規模な素材ハンドリング、プラント納入の能力を組み合わせる。
本提携は、サステナブル技術部門として独立したカルビオンにとって初の本格的なDAC展開となる。
カルビオンは専用のCarbon Capture Calciner(CCC)を開発し、独自のオキシフューエル技術によって純度の高いCO2を分離・回収する。技術ロードマップには、スウェーデンのソルトX・テクノロジー(SaltX Technology)の電化プラットフォーム設計も組み込まれる。
提携はカナダの産業・技術便益(ITB)政策に整合する。カナダ企業への技術・知財・資本の移転と現地サプライチェーンの形成を伴い、TKMSが関与するカナダ哨戒潜水艦プロジェクト(CPSP)との産業連携にも結びつく。
カナダは、北米におけるCDR投資の受け皿として急速に存在感を高めている。アルバータ州の構造化された規制環境と資源・産業基盤が、大規模なDAC展開の足場となっている。
業界では、米国の気候補助金をめぐる先行き不透明感が、DAC開発企業を予見可能性の高い規制環境へ向かわせているとの見方が広がる。
一方で、今回のコミットメントはMoU段階にとどまり、「低コストでの大規模CO2除去」は現時点で達成目標として掲げられたものである。
本件は、技術的なブレークスルーというより、CDR投資の立地選択が政策環境に左右される局面を映す一例として位置づけられる。
アルバータが受け皿となった背景には、規制の予見可能性と資源・産業基盤がある。投資判断が技術成熟度と同等かそれ以上に制度設計の安定性に依存する段階にあることが、本件の構図に表れている。