アンブジャ・セメンツ(Ambuja Cements、アダニ・グループ傘下)は、英国拠点のクリーンテクノロジー企業レイラック(Leilac)と提携し、グジャラート州カッチ地区サンギプラムの自社工場で商用規模のCCS実証に着手すると発表した。
実証では、レイラックの直接分離方式の炭素回収技術とハイブリッド電気加熱を統合し、セメント製造の焼成由来プロセス排出への対応を検証する。石炭消費のゼロ化と、代替燃料の柔軟な利用を企図する。
レイラックの方式は、専用の鋼管を介してキルンを間接加熱し、石灰石の焼成で生じるCO2を高純度のまま分離する。燃焼排ガスと混合しないため、捕集コストを大幅に抑えられる点が特徴である。
セメントのCO2排出は燃料燃焼だけでなく焼成時の化学反応そのものからも生じるため、燃料転換のみでは削減しきれない。
本件は、この焼成由来のプロセス排出に直接対処する点に主眼がある。
実証はアンブジャの年産660万トン規模のSanghi工場で行う。約1GWの自家グリーン電力を前提とし、再生可能電力の活用拡大と組み合わせる。
実証が所定の成果を満たせば、設備を7〜8倍に拡張し、年間100万トン超のCO2回収を目指す。両社はこれを、セメント産業の脱炭素に向けた再現可能な経路の確立につなげたい考えである。
カラン・アダニ(Karan Adani、アンブジャ・セメンツ取締役)は、バリューチェーン横断の連携と次世代技術の評価への取り組みを強調した。レイラックのダニエル・レニー(Daniel Rennie)CEOは、低コストかつ複製可能な解決策の実証を目指すと述べた。
本提携は、SBTiの認証を受けたアンブジャの2050年ネットゼロ目標を支える施策に位置づけられる。業界分析によれば、インドのセメント製造は国内総排出量の約5.8%を占めるとされ、焼成由来のプロセス排出対策の実装が産業脱炭素の焦点となっている。
本件は、燃料転換だけでは対処できないセメントの焼成由来プロセス排出に直接分離方式を当てる試みであり、CCSがセメント脱炭素の実装手段として組み込まれつつある流れの一例として位置づけられる。
ただし現段階は商用実証であり、7〜8倍への拡張は成功を前提とした目標値にとどまる。直接分離方式が掲げる捕集コストの低さが実規模でも維持されるかが、商用展開とバンカビリティを左右する。