石油ガス気候イニシアティブ(Oil and Gas Climate Initiative, OGCI)は2026年6月4日、炭素回収・貯留(CCS)と工学的炭素除去(engineered carbon removals, ECR)の会計・報告のあり方を整理した報告書を公表した。国家インベントリ、企業報告、カーボンクレジット市場の各層で報告基準が断片化している現状を指摘し、これらの調和がプロジェクト展開の加速につながると論じている。
複雑化するバリューチェーンに会計枠組みが追いつかない
CCSとECRがパイロットから大規模かつ複雑なプロジェクトへ移行するなかで、回収・輸送・貯留を担う事業者が分かれ、複数の法域にまたがる事例も生じている。報告書は、こうした構造のもとで排出削減と除去がどのように測定・帰属・主張されるかを確定することが難しいと整理する。
現行の枠組みは出発点を提供するものの、より複雑なプロジェクト構造に対しては明確な解を与えていない。
具体的な課題として、貯留量の所有権、Scope3報告、越境プロジェクト、長期貯留のモニタリングが挙げられている。報告書はパースペクティブズ・クライメート・グループ(Perspectives Climate Group)とカーボン・リミッツ(Carbon Limits)が作成に協力した。
除去と削減の区別を国家報告と整合させる
報告書の中核的な提言は、国家インベントリ報告をNDCと整合させ、除去(removals)と削減(reductions)を明確に区別することにある。両者が会計上混同されれば、クレームの正当性や二重計上の防止が損なわれるためである。
この区別の制度化は、除去系カーボンクレジットがその性質に見合った評価を受けるための前提条件となる。
コンプライアンス・ボランタリー両市場への統合
報告書は、CCSとECRがコンプライアンスおよびボランタリーの両カーボンクレジット市場へどのように統合されつつあるかを扱い、国家・企業・プロジェクト・製品の各報告階層を横断した調和の機会を提示する。会計基盤が整えば、除去系カーボンクレジットの帰属と品質主張が明確化し、市場拡大の障壁の一つが取り除かれる。
もっとも、本報告書は規制当局・標準化団体・プロジェクト開発者向けの議論文書と位置づけられており、複雑な構造に対する具体的な解決策の多くはなお整備途上にある。
編集部の視点
会計ルールの調和は、CCSと工学的除去が大規模展開へ移行する局面で避けて通れない基盤整備であり、本報告書はその論点を国家・企業・市場の各層にわたって体系的に整理した点に意義がある。ただしここで示されたのは解決策そのものではなく、議論の出発点である。
除去と削減の会計上の区別が各報告階層で一貫して制度化されるか否かは、除去系カーボンクレジットが明確な帰属と二重計上の回避を担保できるかを左右し、ひいてはボランタリー・コンプライアンス両市場における除去系の供給拡大の速度を規定する。鉄鋼・セメント・化学など削減が困難な産業部門の脱炭素経路が除去への依存を強めるほど、この会計基盤の成否が市場形成の前提として重みを増す。
参考:https://www.ogci.com/news/ogci-publishes-new-report-exploring-carbon-accounting-and-reporting-for-carbon-capture-and-storage-ccs-and-engineered-carbon-removals-ecr/
