豪州のデジタルインフラ企業ノヴィックテック(NoviqTech、ASX:NVQ)は、自社のブロックチェーンおよびトレーサビリティ基盤群をインドのルネサンス・インフラストラクチャー(Renaissance Infrastructure)に譲渡し、子会社コラリア(Coralia)を通じたバイオ炭由来の炭素除去(CDR)事業へ経営資源を全面的に振り向ける。オーストラリア証券取引所(ASX)は事業構造の重大な変更を受け、コンプライアンス充足までNVQ株を売買停止とした。
譲渡対象は「Carbon Central」「Fuel Central」「NoviqAI」「Quantum Intelligence」の各基盤と関連知的財産である。譲渡対価は総額100万豪ドル(約1億1,300万円)で、完了時に20万豪ドル(約2,260万円)を受領し、残額80万豪ドル(約9,040万円)をルネサンス側の担保を付して四半期ごとの分割で受け取る。
NoviqTech Servicesに在籍する全従業員は、雇用契約・未消化の有給・関連債務とともにルネサンスへ移管される。これによりノヴィックテックは月10万豪ドル(約1,130万円)超のコスト削減を見込む。
ノヴィックテックは、譲渡で得た資本と経営資源をコラリアの成長に集中させる。中核となるのは北クイーンズランド州の旗艦バイオ炭プロジェクトであり、同社はここから生まれるバイオ炭CDRクレジットの70%を、データセンター運営大手のピュア・データセンターズ・グループ(Pure Data Centres Group)への大型オフテイク契約で供給する。
あわせて、メルボルンのスウィンバーン工科大学(Swinburne University of Technology)との研究提携を加速し、低炭素コンクリートへのバイオ炭応用を進める。この取り組みはデータセンター分野を主要な対象に据える。取締役会は、株主価値の最大化はコラリアのバイオ炭CDR事業と低炭素コンクリート製品の事業化にあると判断したとしている。
一方で、生成途上のクレジットの70%を単一の買い手に事前コミットする構造は、需要を早期に固定できる利点の裏で、買い手集中という偏りを抱えるとの見方もできる。
経営体制も刷新された。マネージングディレクターのフレディ・エル・タルク(Freddy El Turk)が退任し、執行取締役のティモシー・ブルックス(Timothy Brooks)が後任に就いた。ブルックスは今回の譲渡を、限られた資本を最も有望な成長機会に集中させる転機と位置づけている。
ASXは6月11日に売買を一時停止し、15日には事業構造の重大な変更に伴うコンプライアンス充足まで売買停止の措置をとった。背景には、セーフガード・メカニズム改革と企業需要の高まりを見据え、豪州でバイオ炭を中心とした高品質なCDR組成を急ぐ事業者の動きがある。
本件は、データセンター・AI分野の排出需要がバイオ炭CDRの供給側を引き寄せる動きの一例として位置づけられる。
注目すべきは、旗艦プロジェクトのクレジットの70%が、事業転換の発表に先行してデータセンター運営事業者へのオフテイクで押さえられている点である。供給者が技術基盤事業を手放してまで除去系カーボンクレジットの創出に経営資源を集中できる背景には、買い手側の確度の高い需要がある。オフテイク契約を起点に開発資金と事業計画を組み立てるこの構造は、データセンター需要が除去系カーボンクレジットの調達を牽引する局面で、供給側の事業モデルがどう再編されるかを示す論点となる。
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参考:https://www.marketindex.com.au/asx/nvq/announcements/trading-halt-3A695091