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三菱電機とVTT、直接海洋回収の中核技術開発を完了 沿岸実証へ

2026.06.15 読了 約3分
三菱電機とVTT、直接海洋回収の中核技術開発を完了 沿岸実証へ
出典:<a href="https://www.mitsubishielectric.com/en/pr/2026/0609_co/" target="_blank">三菱電機</a>

三菱電機とフィンランドのVTT技術研究センター(VTT Technical Research Centre of Finland)は2026年6月9日、海水中のCO2を回収する直接海洋回収(DOC)システムの中核技術開発を完了したと発表した。検証済みのシステム性能と蓄積した実験データを基に、沿岸実証と商業化に向けたパートナー募集を本格化する。

酸性化方式の採用

両社が採用したのは電気化学的な酸性化方式(acid-DOC)である。取水した海水に水素イオンを導入して一時的に酸性化し、溶存していたCO2を気体として回収する。回収後の海水は中和・処理を施し、環境負荷を抑えたうえで海洋に還流する。

固体の炭酸塩として炭素を固定する塩基性化方式(base-DOC)と異なり、acid-DOCは回収したCO2をCCSによる貯留に加え、合成燃料や産業原料といったCCU用途にも振り向けられる。両社は海水からの有価資源回収技術も並行して開発しており、回収資源のバリューチェーン構築を通じて事業全体の収益性強化を狙う。

海洋系の濃度優位とインフラ統合

acid-DOCの設計思想は、海洋系CDRが持つ濃度優位を回収効率に転換する点にある。三菱電機の調査によれば、海水中のCO2濃度は単位体積あたり大気の約140倍に達する。高濃度の媒体を直接処理することで、両社は高効率かつスケーラブルな回収を見込む。

スケール戦略の軸となるのが、既存インフラとの統合である。海水淡水化施設や発電所など、大量の海水を恒常的に処理する設備の取水・前処理系統を活用することで、専用設備に伴う初期投資を圧縮し、段階的な規模拡大を可能にする構成を志向している。

業界分析では、長期的にDOCが年間数ギガトン規模の除去ポテンシャルを持ちうるとの見方も示される。

ただし現時点の到達点はラボ規模での性能検証であり、沿岸実証を経た実環境での回収効率・コスト・海洋環境への影響評価はこれからの段階にある。

両社は沿岸実証システムによる実地検証と新規パートナーの拡大を通じ、商業化を加速する方針を示している。

編集部の視点

acid-DOCの濃度優位と既存海水インフラの活用は、技術・設備の両面で他のCDR経路に対する差別化要因として位置づけられる。CCSとCCUの双方に出口を持つ柔軟性も、回収炭素の事業化という観点では合理的な設計といえる。

もっとも今回の中核技術完了は、研究から実証へ移る商業化トラックの一里塚である。濃度優位という原理的な強みを実環境でのスケール経済に落とし込めるかが、海洋系CDRとしての競争力を左右する。

参考:https://www.mitsubishielectric.com/en/pr/2026/0609_co/

関連タグ CCUS mCDR
カーボンクレジット.jp 編集部
カーボンクレジット.jp編集部|2023年末に当時日本初かつ唯一のカーボンクレジット専門情報メディアを立ち上げ。高度な専門性とわかりやすさを追求した翻訳力。