チェスナット・カーボン(Chestnut Carbonは2026年4月7日、同社が展開する森林管理改善(IFM)プロジェクトから、ベラ(Verra)の「除去タグ」を付与した9万5,909トン分のカーボンクレジットを新たに発行したと発表した。
これは、ベラが導入したIFMプロジェクト向け削減・除去識別ツール「VT0015」を適用した米国初のIFMカーボンクレジット発行事例となる。
ボランタリーカーボンクレジット市場において長年課題とされてきたのが、カーボンクレジットの中でも「排出削減(Reduction)」と「炭素除去(CDR)」を明確に区別できないことだ。同一のVCS(Verified Carbon Standard)プログラム下に両者が混在することで、企業のデューデリジェンスが煩雑化し、グリーンウォッシングリスクの温床ともなってきた。
ベラが新たに導入したVT0015ツールは、IFMプロジェクトにおける純増分の炭素隔離分のみをカーボンクレジットとして識別・タグ付けする仕組みだ。チェスナットが今回発行したカーボンクレジットは、この枠組みに基づき世界最大規模の温室効果ガス(GHG)クレジットプログラムであるVCSにおいて、正式に除去系カーボンクレジットとして登録されている。
チェスナットは、米国内で自然由来カーボンクレジットを開発・管理するリーディングカンパニーだ。同社のIFMポートフォリオは米国最大規模の一つで、37州にわたる250以上の私有林地オーナーが参画している。同社の方法論の特徴は、毎年の森林成長による純増分の炭素固定のみをカーボンクレジット化する点にある。これにより過剰発行(オーバークレジット)リスクを構造的に低減し、追加性および永続性の担保を徹底している。
収益は土地所有者へのカーボンクレジット販売収入として還元され、森林の長期的な健全性維持と地域コミュニティの経済的自立を同時に支援する仕組みとなっている。
2026年初頭、チェスナットは米国のIFMプロジェクトとして初めて、FSC(Forest Stewardship Council)による生物多様性保全インパクト認証を取得した。検証されたコベネフィット(Co-benefit)には、野生動物生息地の回復、大気・水質の改善、そして森林依存生態系および周辺コミュニティの気候レジリエンス強化が含まれる。
チェスナットの最高商業・執行責任者であるブライアン・ディマリノ(Brian DiMarino)氏は次のように述べた。「カーボンクレジットの除去分類を明確かつ一貫した形で確立することは、市場の信頼性向上に不可欠だ。今回の発行は、透明性・厳密な検証・自然由来カーボン除去の整合性に対する当社のコミットメントを体現するものだ」
IFMカーボンクレジットへの「除去タグ」適用は、ボランタリーカーボンクレジット市場における削減系・除去系の分類標準化という長年の課題に対し、ベラが実用的な解を提示した事例として注目に値する。
日本では、GX-ETSや J-クレジット制度において炭素除去(CDR)の位置づけが制度設計上いまだ曖昧な部分があり、国内のカーボンクレジット購入企業がSBTiや開示フレームワーク対応で除去系と削減系を峻別する必要性が高まる中、このような国際標準の動向は日本の制度論にも直接影響を与えうる。