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18カ国企業調査で9割が2035年までの電化を見込む

2026.06.16 読了 約5分
18カ国企業調査で9割が2035年までの電化を見込む
出典:Powering Up(We Mean Business Coalition)

ウィー・ミーン・ビジネス・コアリション(We Mean Business Coalition)、E3G、グローバル・リニューアブルズ・アライアンス(Global Renewables Alliance)の3団体が委託した18カ国の企業経営層調査で、回答者の90%が2035年までに自社事業の大半を電化すると見込み、73%が2030年までの電化を予定すると回答した。調査はパブリック・ファースト(Public First)が2026年4月20〜26日に1,994名を対象に実施した。

電化を支持する動機として、91%が電化はエネルギー安全保障を高めると回答し、79%が地政学的な不安定が自社の電化をより緊急にしたとした。一方で72%は政府の政策が電化の速度に追いついていないと指摘し、62%は十分な支援がなければ事業の移転を検討するとした。

再エネ中心の電力システムへの選好

化石燃料からの脱却志向は明確である。再エネ中心か化石燃料中心かの二者択一では82%が再エネを選び、63%が2035年までに自国が化石燃料から脱却すべきだと回答した。

経済的な合理性が支持の基盤にある。88%が電化は競争力を高めると回答し、84%が長期的な操業コストの低下を見込んだ。国レベルでも90%が再エネ中心の電力システムは経済成長を押し上げるとした。

電力システムの選好と世界の投資配分

国の電力システムとして選好する電源

再エネ中心 82%
化石・他 18%

2026年の世界投資見通し(IEA)

クリーンエネルギー
2.2兆ドル(約352兆円)
化石燃料
約1.1兆ドル(約176兆円)

出典:Powering Up/IEA World Energy Investment 2026。為替は1ドル=160円で換算。

この姿勢は投資の実態とも整合する。IEAは2026年のクリーンエネルギー投資が石油・石炭・天然ガスの2倍にあたる2.2兆ドル(約352兆円)に達する見通しと示し、BloombergNEFは2025年のエネルギー転換投資が過去最高の2.3兆ドル(約368兆円)に達したと報告している。

石炭集約市場の撤退志向とカーボンプライシング

石炭依存の高い市場でも撤退の機運が強い。石炭火力に大きく依存するインドネシア、フィリピン、インド、豪、南ア、ポーランド、中国の7市場では、67%が2035年までの石炭火力からの撤退を支持した。中国とインドでは2025年に石炭火力発電が1970年代以来初めて減少した。

撤退志向の背景には炭素コストの圧力がある。ポーランドではEU ETSの規制下で石炭が負担を抱えることが、電化をより安価な選択肢と見なす要因として挙げられた。同国の化石燃料輸入額は2024年に264億ユーロ(約4兆9,000億円)に上り、競争力の阻害要因とされる。

石炭集約7市場における石炭火力撤退の支持

67%

が2035年までの石炭火力からの撤退を支持

インドネシア フィリピン インド 南ア ポーランド 中国

中国とインドでは2025年に石炭火力発電が1970年代以来初めて減少(中国 −1.6%、インド −3%)。

出典:Powering Up

トルコ(Türkiye)では2053年ネットゼロ目標とCOP31ホスト国としての立場、最大の貿易相手であるEUの規制方向が電化の動機として示された。

インフラと政策の遅れ

企業の意欲に対し、電力系統と政策の整備は遅れている。69%が自社の電化が政府の準備を上回る速度で進んでいると回答し、63%が自国の電力システムが追いついていないとした。

系統制約は具体的な投資判断に影響している。IEAは電化と再エネ導入に対応するには、年間の系統投資を現状の約4,000億ドル(約64兆円)から2030年までに約50%引き上げる必要があると試算している。

編集部の視点

本調査は、企業の電化需要が、エネルギー安全保障とコストを主軸としながらも、コンプライアンス市場の炭素価格と構造的に接続しつつあることを示す事例として位置づけられる。

石炭がEU ETSの負担を負うポーランド、CBAMに直面するEU向け輸出企業を抱えるトルコ、そして2026年度にGX-ETSが第2フェーズへ移行し電力部門へのキャップと有償オークションが導入される日本など、炭素価格への曝露が強まる市場ほど、化石燃料設備の電化は規制対応の色彩を帯びる。炭素価格は排出にコストを課すことで、企業の脱炭素予算をオフセット調達ではなく自社設備の直接削減へ振り向ける圧力として働く。一方で、本調査が回答者の動機として挙げるのはエネルギー安全保障と操業コストであり、炭素価格は明示された誘因ではなく構造的背景にとどまる。

コンプライアンス市場の拡大が企業の直接削減投資をどこまで牽引するかは、今後のカーボンクレジット需要の質を左右する論点となる。

参考:https://powering-up-business-poll.com/

カーボンクレジット.jp 編集部
カーボンクレジット.jp編集部|2023年末に当時日本初かつ唯一のカーボンクレジット専門情報メディアを立ち上げ。高度な専門性とわかりやすさを追求した翻訳力。