エクアドル環境エネルギー省(MAE)は、パリ協定6条に基づく緩和成果の認可・登録・追跡・国際移転を規律する技術規則を大臣令として制定した。署名により発効し、2026年5月29日に公表された。
同規則は、6条2項の協調的アプローチの国内実施と、ホスト国としての6条4項メカニズムへの参加を規律し、緩和成果の国際移転に必要な認可・会計・報告の手続きを国内法として体系化するものである。
環境サービスと緩和成果を切り分ける法的構成
同国では、環境サービスを私的占有の対象にできないとする憲法74条の規定により、緩和成果の取引に法的不確実性が残ってきた。
今回の規則は、憲法裁判所の判断に依拠してこの制約を整理した。環境サービスや生態系機能と、人為的介入によって定量化された緩和成果とを区別し、規律対象を後者に限定する立場を明確にしている。
そのうえで認可された緩和成果(RAM)を、経済的内容を持つ無体物として位置づけ、移転可能な動産に準じて扱うと定めた。所有・流通・移転・リタイア・取消の対象となる資産性を、憲法上の非占有原則と抵触しない形で構成している。
主権的統制を軸とする認可と会計の枠組み
規則は気候主権を基本原則に据える。
国際移転は、MAEによる明示的な認可書(LoAuth)がない限り効力を生じないと定め、認可の制限・停止・取消の権限を国に留保する。
国際移転の認可は現行NDCとの整合を前提とし、国家GHGインベントリとの整合・調整プロトコルの提出を要する。整合の結果として調整された量が初回国際移転の認可上限となる。コリ調整は初回の国際移転が実行された時点で適用され、二重計上は明示的に禁止される。
一方で、価格統制を行わない自由価格原則や、最小限の規制介入、バンカビリティと長期資金調達への配慮も併記され、主権的統制と投資の予見可能性の両立を志向する設計となっている。
認可の取消事由は限定列挙され、価格や市況など純粋に商業的な理由による取消は禁じられる。既に完了した国際移転や登録済みの記録には、原則として将来効でのみ影響する。
規則の策定は、世界銀行(World Bank)、グローバル・グリーン・グロース・インスティテュート(GGGI)、スペイン国際開発協力庁(AECID)の支援を受けて進められた。
編集部の視点
本件は、ホスト国側が6条の緩和成果移転に必要な認可・会計・報告の手続きを国内法として体系化した事例として位置づけられる。
6条2項市場では、ホスト国の制度整備の有無が相手国にとっての取引可能性を左右する。エクアドルは、緩和成果の資産性と移転手続きを国内法で確定させたことで、二国間協力の受け皿となる前提条件を備えた。
ただし、ホスト国フレームワークの整備は中南米で先行例があり、本件はその潮流に連なる一例でもある。制度の存在と認可・移転の実績は別の問題であり、現時点で評価しうるのは法的基盤の整備段階である。
