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CARとは?詳しくてわかりやすい用語解説|What Is The Climate Action Reserve?

2025.01.01 更新 2026.07.04 読了 約12分
CARとは?詳しくてわかりやすい用語解説|What Is The Climate Action Reserve?

信頼性の高いカーボンクレジット市場を築くには、その土台となるルールブックの品質が何よりも重要である。そのルールブックを、徹底した透明性と科学的知見に基づき、全てのステークホルダーを巻き込みながら作り上げてきた、北米を代表する基準認証機関がCAR(Climate Action Reserve)である。

本記事では、CARがどのようにして市場の信頼を獲得し、特に北米の気候変動政策で中心的な役割を果たしているのかを解説する。

1分でわかる要点: CARの定義はこちら → CAR(クイック定義)

CAR(Climate Action Reserve)とは

CAR(Climate Action Reserve)とは、一言で言うと「米国を拠点とし、カーボンオフセットプロジェクトの基準(プロトコル)を開発・管理する、高い信頼性を持つ非営利団体」である。

その起源は、2001年にカリフォルニア州が設立した公的な温室効果ガス登録簿「California Climate Action Registry」にある。2008年、州の義務的報告制度(AB32)の整備が進んだことを機に、同登録簿はオフセットプロトコルの開発に特化する非営利団体として独立・改称し、現在の「Climate Action Reserve」となった。この公的な出自が、CARの厳格性と信頼性の高さを物語っている。

CARは、自主的なオフセットを目指すボランタリーカーボンクレジット市場(VCM)と、法律で定められた排出削減義務を果たすためのコンプライアンス市場の両方で、主要な役割を担っている。

CARが重要である理由

CARの重要性は、そのプロトコル(方法論)の品質と、それを生み出すプロセスの透明性にある。

高品質で透明性の高いプロトコル

CARは、カーボンクレジットの創出ルールであるプロトコルの開発プロセスを、科学者、産業界、環境NGO、政府機関など、全てのステークホルダーに公開し、徹底的な議論を経て策定する。このため、CARのプロトコルは市場でゴールドスタンダード(最高品質の基準)の一つと見なされている。

その評価は第三者機関の枠組みにも表れている。ICVCM(自主的炭素市場の健全性を審査する国際的な評議会)は2024年4月、ACR・Gold Standardとともに、CARを世界最初期に「CCP Eligible」(プログラムレベルでのCCPs適格)と認定した3プログラムの一つとした。さらに2024年6月には、CARの3つのプロトコルが方法論レベルでもCCPラベル要件を満たすと承認されており、これらに基づき発行されたクレジットにはCCPラベルが付与できるようになっている。

規制市場からの信頼

CARは、世界で最も厳格な炭素市場の一つであるカリフォルニア州キャップ&トレード制度において、2012年12月14日、ACRと同日付でCARB(カリフォルニア州大気資源局)から公式な「オフセット・プロジェクト登録簿(OPR)」として承認された。これは、CARの基準が政府の厳しい要求水準を満たしていることの証である。CARが発行する「レジストリオフセットクレジット」は、CARBの審査を経て「ARB Offset Credit」となり、州内の対象排出事業者は、これを購入・充当することで自らの排出削減義務の一部を果たすことができる。

新たな分野への挑戦

CARは、これまでカーボンクレジット化が難しかった新しい分野のプロトコル開発にも積極的に挑戦している。特に、都市の緑化を評価する都市林プロトコルは、その先進的な取り組みとして知られている。同プロトコルは現在、植林活動と森林管理活動それぞれの実態に対応するため、「米国都市植林プロトコル」と「米国都市林管理プロトコル」の2本に再編されており、カリフォルニア州森林防火局(CalFIRE)の支援を受けて開発された経緯を持つ。

仕組みと具体例

プロトコル開発とクレジットの発行

CARの活動の中核は、高品質なプロトコルの開発である。プロジェクトは、このプロトコルに定められた厳格なルールに沿って計画・実施される。そして、独立した第三者機関による検証を経て、CRT(Climate Reserve Tonnes、CO2換算1メートルトンの削減・回避・吸収量に相当する単位)でカーボンクレジットが発行される。発行されたクレジットは、他の登録簿の仕組みと同様に、取引や移転を経て最終的な使用(リタイアメント=償却)まで追跡される。

CARが得意とするプロジェクト分野

CARは、特に北米の状況に即した以下のような分野で、質の高いプロトコルを数多く開発している。

メタンガスの回収・破壊
埋立地、炭鉱、そして家畜の糞尿管理などから排出される、CO2より何十倍も強力な温室効果ガスであるメタンを回収・破壊するプロジェクトである。

森林管理(Forestry)
持続可能な森林管理の改善や植林に加え、「都市林プロトコル」を世界で先駆けて開発した。これにより、都市部の緑化活動によるCO2吸収をクレジット化する道を拓いた。米国の森林プロトコルに加え、北米域外への展開例として「メキシコ森林プロトコル」も持つ。

オゾン層破壊物質(ODS)の破壊
古い冷蔵庫などに含まれる強力な温室効果ガスであるフロン類などを回収・破壊するプロジェクトにも強みを持つ。

国内外動向

海外の動向

CARを取り巻く制度環境は、近年大きく進展している。2025年9月には、クレジットの永続性(気候便益がどれだけ長く維持されるかという論点)に関する作業部会を立ち上げ、モニタリング期間やバッファープール、保険・信託の活用といった論点についてステークホルダーと議論を重ね、改定案をパブリックコメントに付した。

2026年に入ってからも動きは続いている。同年1月にはCAR全体の累計発行量が250百万CRT(クレジット)の節目を超えたことが公表され、4月には土壌炭素貯留(Soil Enrichment)関連プロジェクトの発行量が200万クレジットを突破するとともに、市場で最初となる持続可能な農業由来クレジットへのCCPラベル付与が行われた。また同年3月末には、プロトコルを「共通部分」と「地域(法域)別モジュール」に分割し、他の法域にも展開しやすくする新たな「モジュール型プロトコル構造」への移行方針を公表し、4月27日までパブリックコメントを募集した。これは、従来北米に集中してきたCARの展開範囲を広げる試みとして注目される。

市場調査会社Fastmarketsの分析によれば、VerraGold StandardACRCAR・ART・Puro・Cercarbonoなど主要登録簿全体でのリタイアメント(償却)量は2025年に169百万tCO2eとなり、このうちCARが占める割合は2021年の2%程度から2025年には5.55%まで上昇した(2015年当時の15%超のピークは下回る水準)。

日本との関わり

CARは北米の規制市場を主戦場とする組織であり、Verraなど国際展開の進んだ登録簿と比べると、日本企業による直接的なCARクレジットの活用事例は限定的である。もっとも、北米拠点のサプライチェーンを持つ企業や、質の高いメタン回収・森林保全プロジェクトを求める企業にとっては、調達候補の一つとなり得る。クレジットの品質やサプライヤーごとの実績を横断的に比較する際は、CDR PROのような専門プラットフォームの活用も有効な選択肢となる。

メリットと課題

メリット

公開されたプロセスで開発されるため、プロトコルの品質と透明性が非常に高い。

規制市場で認められていることによる、客観的な信頼性の高さがある。ICVCMのCCP Eligible認定を世界最初期に取得するなど、新しい品質保証の枠組みへの対応も進んでいる。

都市林業など、ユニークで社会貢献度の高い分野のプロトコルを開発している。

課題

その強みが北米市場に集中しており、他の地域でのプロジェクト展開はVerraなどに比べて限定的である(メキシコ森林プロトコルやモジュール型プロトコル構造への移行は、この課題に対応する動きと位置づけられる)。

徹底したステークホルダー・プロセスは、プロトコル開発に時間がかかるため、市場の急速な変化への対応が比較的ゆっくりとなる場合がある。

まとめ

本記事では、CARがカリフォルニア州の公的な取り組みを起源とし、徹底した透明性とステークホルダー主義によって、世界で最も信頼されるカーボンクレジット基準の一つとなったことを解説した。

CARは、カリフォルニア州の気候変動対策を起源とする、米国の主要なクレジット基準である。

公開されたプロセスで策定される、高品質で信頼性の高いプロトコルが最大の特徴である。

ボランタリーカーボンクレジット市場とコンプライアンス市場の両方で、重要な役割を担う。

都市林業など、ユニークな分野のルールメイキングをリードしつつ、モジュール型プロトコル構造への移行など北米域外への展開も模索している。

CARの真価は、その発行量(Quantity)よりも、一つ一つのプロトコルとカーボンクレジットの品質(Quality)に対する徹底したこだわりに集約される。CARの歩みは、公正で透明な市場インフラをいかにして構築するか、という問いに対する、一つの優れた答えを示している。

In English: What Is The Climate Action Reserve?

The Climate Action Reserve (CAR) is a US-based nonprofit that develops and manages high-integrity protocols for carbon offset projects. It traces its roots to the California Climate Action Registry, a public registry established by the State of California in 2001; in 2008 it was spun off as an independent nonprofit focused on offset protocol development and took its current name.

CAR plays a central role in both the voluntary carbon market and compliance markets. Its protocols are developed through an open, multi-stakeholder process involving scientists, industry, environmental NGOs, and government agencies, which is why they are widely regarded as one of the gold standards of the market. In April 2024, CAR was named one of the first three programs — alongside ACR and Gold Standard — to receive “CCP Eligible” status from the Integrity Council for the Voluntary Carbon Market (ICVCM), and several of its protocols have since earned the Core Carbon Principles (CCP) label at the methodology level.

CAR has been an approved Offset Project Registry (OPR) for California’s Cap-and-Trade Program since December 14, 2012 — the same day as ACR. It is known for pioneering protocols in hard-to-credit sectors, including methane destruction, ozone-depleting substance destruction, and its Urban Forest Protocol (now split into separate U.S. Urban Tree Planting and U.S. Urban Forest Management protocols), the first of its kind to credit CO2 absorption from urban greening.

Recent milestones illustrate CAR’s growth and evolution: it issued its 250-millionth credit around January 2026, launched a permanence work program in September 2025 to revisit issues such as monitoring duration and buffer pools, and in early 2026 proposed a “modular protocol structure” that separates a common core from jurisdiction-specific modules — an effort to extend its protocols beyond its traditionally North America-centric footprint. Its share of market-wide credit retirements rose from about 2% in 2021 to 5.55% in 2025, according to Fastmarkets.

CAR’s core value proposition is not the sheer quantity of credits it issues, but its uncompromising focus on the quality of each protocol and each credit — a model for building a fair and transparent market infrastructure.

カーボンクレジット.jp 編集部
カーボンクレジット.jp編集部|2023年末に当時日本初かつ唯一のカーボンクレジット専門情報メディアを立ち上げ。高度な専門性とわかりやすさを追求した翻訳力。