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排出量情報の開示が変える航空便の予約行動

2026.06.15 読了 約3分
排出量情報の開示が変える航空便の予約行動
出典:イメージ

レゾーシズ・フォー・ザ・フューチャー(Resources for the Future、RFF)は、航空便の予約サイト上で表示される排出量情報が消費者の便選択を変えることを、米国内線市場の実購買データを用いて実証したワーキングペーパーを公表した。

分析によれば、予約サイトが排出量を表示するようになって以降、消費者は便ごとの排出量差に対して約22%感応度を高めた。

開示後に高まった排出量感応度

排出量推計を最初に表示したのは、2019年4月のSkyscannerである。その後3年間で、ExpediaやGoogle Flightsを含む6サイトが追随した。利用される予約サイトは旅行者や州によって異なり、排出量表示への接触度は時期と地域の両面でばらついた。研究チームはこの差異を利用し、2018年から2022年の米国内線の実予約データを分析した。対象は63大都市圏を結ぶ1,000超の路線で、これら都市圏間旅客の74%をカバーする。

運賃・路線・各社の就航状況・機材などを制御し、表示情報の効果を他の要因から分離した。いずれの予約サイトも排出量を表示していなかった時期には、同一路線上で排出量の多い便と少ない便のいずれを選ぶかは、両者の排出量差にほとんど反応していなかった。表示を導入するサイトが増えるにつれ、その感応度は測定可能な形で一貫して上昇した。

実購買データによる支払い意思

感応度の上昇を貨幣換算すると、消費者は同一条件で排出量が1トン少ない便を選ぶために、最初の表示開始前と比べて平均33ドル(約5,200円)多く支払う意思を持つに至った。平均的な便のCO2排出量は約0.455トンであり、これは便1回分の排出を全量相殺するのに約15ドル(約2,400円)を支払う意思に相当する。

支払い意思をめぐる既存研究の多くがアンケートや実験室実験に依拠するのに対し、本研究は実際の予約データから支払い意思の変化を推計した点に特徴がある。また航空分野の研究の多くがボランタリーカーボンオフセットへの支払い意思を扱うのに対し、本研究は排出の少ない便を直接選ぶ行動、すなわち直接排出に焦点を当てている。

市場型手段としての位置づけ

著者は、予約サイトがアルゴリズムを更新し、持続可能な航空燃料(SAF)の採用といった航空会社の排出削減努力をより的確に反映させれば、単独では経済的に見合いにくい取り組みを後押ししうると指摘する。

もっとも、消費者選好の変化それ自体が直ちに大きな影響を及ぼすわけではない。漸進的だが一貫した需要シフトが、機材構成・路線・運航慣行の商業的魅力を徐々に変えていく経路が想定されている。

編集部の視点

本件の含意は、情報開示が規制や補助金に比べて低コストな需要誘導策として機能しうる点にある。アンケートではなく実購買データで支払い意思の上昇を捉えたことで、開示を一つの市場型政策手段として評価する根拠が一段強まった。

ただし効果は感応度の相対的上昇にとどまり、需要シフト単独で航空脱炭素の経済性を反転させる規模ではない。開示は機材更新やSAFといった構造的手段を補完する位置づけにあり、予約サイトのアルゴリズムが削減努力をどこまで的確に価格と選好へ翻訳できるかが、その実効性を左右する。

参考:https://www.rff.org/news/press-releases/new-research-finds-that-information-on-flight-emissions-changes-booking-behavior/

カーボンクレジット.jp 編集部
カーボンクレジット.jp編集部|2023年末に当時日本初かつ唯一のカーボンクレジット専門情報メディアを立ち上げ。高度な専門性とわかりやすさを追求した翻訳力。