マイクロソフト(Microsoft)が、インドのディープテック企業アルトカーボン(Alt Carbon)から、ERW由来のCDRクレジットを最大36,920トン調達する複数年契約を締結した。マイクロソフトにとって、アジアで初のERW調達となる。
カーボンクレジットは、西ベンガル州のダージリン復興プロジェクト(Darjeeling Revival Project、DRP)から創出される。同プロジェクトは、ダージリンの茶園と周辺の水田に玄武岩を散布し、1,000年以上の炭素固定をうたう。現在8万エーカー超の農地と3万5,000人超の農家が参画している。
検証はアイソメトリック(Isometric)が担い、同社のレジストリ上で発行・管理される。一方、アルトカーボンのアイソメトリック経由の発行実績は累計9,566トンにとどまる。
契約には、納入・検証のマイルストーン達成を条件とする追加調達オプションも含まれる。
本件は、グローバルサウスの開発者が高品質なCDR供給の担い手として台頭する流れの一例である。同社が示す市場データによれば、グローバルサウスの供給者はCDR発行量の26%を占め(2022年の2%未満から上昇)、資金1ドルあたりの技術由来カーボンクレジットの産出量はグローバルノースの15倍に達するという。
背景には、適した地質、低コスト、科学志向の新興開発者の登場という条件がある。ERWについては、グローバルサウス全体で年間最大2ギガトンの除去ポテンシャルがあるとされる。
アルトカーボンは、バンガロールと茶園内に自社の地球科学ラボを設け、2026年までに年間10万件の試料処理を目指す。試料処理能力と現地計測の拡充によりMRVコストを引き下げ、高品質な除去系カーボンクレジットの総コスト低減につなげる方針である。
マイクロソフトは2030年までのカーボンネガティブ達成を掲げており、本件はその一環に位置づけられる。データセンター拡張に伴う排出増を背景に、同社は耐久性の高い除去系カーボンクレジットの調達を積み重ねている。
業界では一時、同社が炭素調達を停止したとの観測もあったが、本件はその継続姿勢を示すものとなった。マイクロソフトのカーボンリムーバル部門責任者フィル・グッドマン(Phil Goodman)は、インドにおける耐久性のある除去能力の構築と、アルトカーボンのこれまでの納入実績を評価するとコメントしている。
本件は、グローバルサウスがCDR供給の担い手として存在感を増す流れの一例として位置づけられる。マイクロソフトのアジア初のERW調達という事実は象徴的だが、これ単独で供給構造の転換を示すものではない。
グローバルサウスの優位を支える条件は揃いつつある。一方で、CDR市場全体で検証済み発行が需要に追いつかない構図は変わらず、アルトカーボン自身の発行実績も限定的にとどまる。グローバルサウスがCDR供給の中心地となり得るかは、発行実績の積み上げとMRVコストの低減が伴うかに左右される。