DNV(船級協会)が、カーボンリッジ(Carbon Ridge)の遠心分離方式による船上CO2回収・貯留(OCCS)システムについて、CO2回収率がピークで98%に達したと検証した。
遠心分離方式のOCCSを商業船に実装した事例は世界初となる。
検証はDNVが定めたOCCS性能検証の標準手法に基づき、第三者として実施された。
商業運航下の5カ月実証
実証はスコルピオ・タンカーズ(Scorpio Tankers)が保有するLR2型プロダクトタンカーSTIスピガ(STI Spiga、109,999 dwt、2015年建造)で行われた。システムは2025年7月にトルコのベシクタシュ造船所で搭載され、同船が通常の商業運航を続ける中で5カ月間稼働した。
DNVは試験手法、計算、報告された性能指標を精査したうえで、ピーク回収率が98%を超えたと確認した。一方で、観測値の55%は86〜98%のレンジに収まっており、98%はあくまでピーク値である。
DNVのOCCS担当責任者ハラ・ゲオルゴプル(Chara Georgopoulou)は、独立検証による回収率の裏付けがOCCSの商業モデル構築に不可欠だと述べ、次段階として定期検証からリアルタイムデータに基づく連続的な保証への移行に言及した。
規制強化が需要を後押し
スコルピオ・タンカーズの最高執行責任者キャメロン・マッキー(Cameron Mackey)は、炭素価格の上昇や規制強化を見込む船主にとってOCCSは魅力的な選択肢だと指摘した。設置が容易で乗組員の運用負担が小さい点も評価している。
カーボンリッジのシステムは既存船・新造船の双方に適用でき、IMO規制への対応手段として位置づけられる。検証された回収率は、規制ドリブンの需要を商業展開につなげる前提となる。
回収CO2の出口とカーボン市場との距離
カーボンリッジは回収にとどまらず、CO2の輸送、隔離、収益化までを一貫して提供する事業モデルを掲げている。
ただし本件は化石燃料の燃焼に由来するCO2を船上で回収するものであり、排出回避の文脈に属する。大気中のCO2を除去するCDRや除去系カーボンクレジットとは独立した枠組みで評価する必要がある。
回収CO2の収益化がカーボン市場とどう接続するかは、回避系の取扱いに依存する。除去系カーボンクレジットの品質要件とは別の論点として整理されるのが一般的である。
編集部の視点
遠心分離方式のOCCSの実船性能を第三者機関が裏付けた点に、本件の意義がある。
独立検証は性能報告に共通の物差しを与え、商業モデルの前提となるバンカビリティ評価を可能にする。船級協会による検証が回収率という核心指標に及んだことは、技術実証から事業評価への移行を示すものとして位置づけられる。
ただし98%はピーク値であり、観測の過半は86〜98%のレンジにとどまる。実運用での平均性能と長期耐久性は今後のデータが左右する領域であり、現時点では既存実証の延長線上にある到達点である。
規制強化が需要を生む構造は明確だが、回収CO2の出口、すなわち輸送と隔離、収益化のコスト構造がOCCSの普及速度を左右する。
