Evero Energy、英国の主力BECCS「InBECCS」が計画申請段階に到達

カーボンクレジット.jp 編集部

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エヴェロ・エナジー(Evero Energy)は5月29日、英国北西部のHyNet産業クラスターで展開する主力BECCS事業「InBECCS」(Ince Bioenergy with Carbon Capture and Storage)の計画申請を提出したと発表した。同事業は英国政府のGGRビジネスモデルのもとで最も先行するBECCS施設として位置づけられる。

計画申請の提出は、英国のネガティブエミッション基盤の整備に向けた手続き上の前進であり、今後の正式な計画・協議プロセスの起点となる。

事業概要

InBECCSは、既存のバイオマス発電所Ince Bio PowerにCO2回収設備を後付けする事業である。同発電所は、埋立て以外に用途のないカテゴリーC材の廃木材を原料に発電を行っており、回収設備の導入後は年間最大250,000トンのCO2を回収し、大気から恒久的に除去する見込みである。発電規模は10万世帯超への電力供給に相当する。

回収したCO2は、HyNetの共有輸送・貯留インフラを通じてアイリッシュ海の海底下に恒久貯留される。CO2回収技術には三菱重工業(MHI)のアミン吸収法が採用される。稼働開始は2030年を目標とする。

政策主導の制度的位置づけ

InBECCSは2025年、英国政府のTrack-1拡張プロセスにおいてHyNetクラスター内の優先案件に選定された。GGRビジネスモデルは、商業的に未成熟なネガティブエミッション基盤の立ち上げを政策的支援によって促す枠組みであり、本件はその下で最も先行する案件にあたる。

最高商務責任者のニール・ベネット(Neil Bennett)は、計画申請の提出をエヴェロと英国の炭素除去セクターにとっての節目と位置づけ、廃木材管理と炭素回収の組み合わせによる気候インパクトの実現を強調した。

地中貯留による恒久性と品質評価

地中貯留に基づく除去は、蓄積量の変動リスクを抱える森林系の自然由来除去と比べ、パーマネンスの面で優位に立つ。InBECCSはプロアース(Puro.earth)のFuture Facilityプログラムに英国初のエンジニアド除去案件として登録されており、除去系カーボンクレジットとしての信頼性の裏付けとしている。

一方で、BECCSはバイオマス原料調達の持続可能性や、生物起源のCO2を除去として計上する際のカーボン会計の厳格性をめぐり、品質面の論点が残る。恒久性の高さが、調達段階を含めたライフサイクル全体の炭素収支の透明性によって裏打ちされるかが評価の分かれ目となる。

編集部の視点

InBECCSの計画申請提出は、制度と技術の両面から英国の技術的除去市場が実装段階に近づいていることを示す。

GGRビジネスモデルという政策的支援のもとで、地中貯留を前提とした商業規模のBECCSが計画段階に到達した意義は小さくない。政策枠組みと恒久除去技術が噛み合う形で、規制市場に近い性格を帯びた除去基盤の整備が具体化しつつある。

ただし、現段階はあくまで計画申請という手続き上の一里塚であり、2030年の稼働まで建設・運用上の不確実性は残る。政策的支援への依存度も高く、補助制度を離れた事業性の検証はこれからの段階にある。

政策支援と恒久除去技術を組み合わせた商業規模の実証案件として、InBECCSは英国のGGR市場形成の試金石に位置づけられる。

参考: https://evero.energy/news/planning-application-submissions