CCSや水素事業の進捗を可視化 カーボンストレージが世界規模の監視基盤を公開

村山 大翔

村山 大翔

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炭素管理インフラのデータ解析を手掛けるカーボンストレージ(CarbonStorage, LLC)は2月2日、炭素回収・貯留(CCS)や低炭素インフラの動向をリアルタイムで追跡する世界規模のインテリジェンス・プラットフォームを一般公開した。

同社は米国テキサス州ヒューストンを拠点としており、急速に拡大する炭素除去(CDR)市場において、投資家や事業者が直面する「データの断片化」という課題の解消を目指す。本プラットフォームは、地理情報システム(GIS)を用いたマッピング技術を活用し、プロジェクトの進捗から規制当局の承認状況までを一元的に提供する。

今回のプラットフォーム公開により、炭素回収・貯留(CCS)や大気直接回収(DAC)、バイオエネルギー炭素回収・貯留(BECCS)といった主要な炭素除去技術のほか、水素製造や合成燃料(e-fuels)といった広範な低炭素インフラのデータが網羅された。

特に注目されるのは、二酸化炭素(CO2)の長期的かつ安全な地下貯留に不可欠な、米国環境保護庁(EPA)が管轄する「クラス6地下圧入井(Class VI injection well)」の認可プロセスが詳細に追跡されている点である。プロジェクトの準備状況や規制上のマイルストーンを可視化することで、開発のボトルネックとなっている許認可の停滞を浮き彫りにする。

背景には、世界各国の政府による政策的なインセンティブの拡充と、企業のネットゼロ達成に向けた投資の加速がある。

これまで、こうしたインフラデータは公的機関や民間企業の間に分散しており、高精度な情報をタイムリーに入手することが困難であった。カーボンストレージ社は、これらの断片化した情報を標準化されたデータセットに統合し、インタラクティブな地図や分析ツールを通じて提供する。これにより、投資家は資本投下判断の精度を高め、開発者は競合他社の動向や輸送インフラの接続可能性を効率的に評価することが可能となる。

現在は、主要なプロジェクトのマップや要約情報を無料で公開しており、プロフェッショナル向けには高度な分析ツールや詳細なプレミアム・データセットをオプションで提供している。炭素管理が脱炭素戦略の中核へと移行する中、信頼性の高いインフラ・データへのアクセスは、プロジェクトの実現可能性を左右する決定的な要素となりつつある。

市場の透明性が向上することで、ボランタリーカーボンクレジット市場(VCM)におけるカーボンクレジットの信頼性担保にも寄与することが期待される。

データの透明性が「クレジットの質」を変える

今回のカーボンストレージ社によるプラットフォーム公開は、単なるツール提供以上の意味を持つ。

現在、カーボンクレジット市場、特にエンジニアリングベースのCDRにおいては、そのカーボンクレジットが「実際にどれだけの期間、安全に貯留されるのか」という透明性が価値を左右している。これまでブラックボックス化しがちだった地下貯留(CCS)の許認可状況や輸送インフラの進捗が可視化されることで、カーボンクレジットの買い手はプロジェクトの「実行リスク」をより正確に評価できるようになるだろう。

特に日本企業にとっては、海外のCCSプロジェクトへ出資・参画する際のデューデリジェンスにおいて、こうしたリアルタイムの監視データは不可欠な「武器」となるはずだ。

今後は、こうしたインフラデータが、測定・報告・検証(MRV)のデジタル化(dMRV)と連携し、カーボンクレジットの生成から消却までをリアルタイムで監視するエコシステムの基盤になると予測される。

参考:https://www.globenewswire.com/news-release/2026/02/02/3230144/0/en/CarbonStorage-io-Launches-Global-Carbon-Capture-and-Low-Carbon-Infrastructure-Intelligence-Platform.html