英国政府とエニ社、38マイルのCO2回収パイプライン正式承認 ハイネット・クラスターの中核「Liverpool Bay CCS」が建設段階へ

村山 大翔

村山 大翔

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GHG削減の本命、CCSの国家戦略化が本格始動。英産業の競争力と脱炭素を支える起爆剤へ

2025年4月24日、英国エネルギー安全保障・ネットゼロ省(DESNZ)とイタリアの大手エネルギー企業Eni(エニ)は、イングランド北西部の産業地帯から排出されるCO2を海底に恒久貯留するための「Liverpool Bay CCSプロジェクト」における資金調達を完了。これにより、全長38マイル(約61km)のCO2輸送パイプライン建設が正式に承認され、プロジェクトは建設フェーズに入りました。

このプロジェクトは、英国の代表的なCCSクラスター「HyNet(ハイネット)」の中核インフラであり、2030年代には年間最大1,000万トンのCO2を隔離可能なスケールに拡張される予定です。

英政府の「Plan for Change」と連携、脱炭素と雇用創出を両立へ

本プロジェクトは、英国政府が発表した脱炭素産業政策「Plan for Change」の柱の一つであり、今後25年間で217億ポンド(約4兆円)がCCSクラスターに投資される見込みです。

Ed Miliband英エネルギー安全保障・ネットゼロ担当大臣は「今日、我々は英国の新たな産業革命=クリーンエネルギー産業の幕開けを告げる。エンジニア、溶接工、電気技師など産業の担い手に仕事を提供し、地域の再生を図る。」とコメントしました。

Eni CEOのClaudio Descalzi氏も、「HyNetは世界で最も先進的なCCSクラスターの一つとなるだろう。産業排出に対する有効な対策が存在しない中、CCSは不可欠な選択肢だ」と述べ、同社がCO2輸送・貯留技術のグローバルリーダーとしてこの分野を主導する意思を示しました。

「Liverpool Bay CCS」の全貌

項目内容
対象地域英国・リバプール湾/マンチェスター/北ウェールズ
貯留方式枯渇ガス田への海底貯留(Eni所有のガス田活用)
導入インフラ既存パイプライン+新設35kmパイプライン
輸送長約149km(陸上+海上)
処理能力2028年開始時:年間450万トン/2030年代:年間最大1,000万トン
想定接続企業廃棄物発電、セメント、低炭素水素製造など

このプロジェクトは既存のオフショア設備の一部を再利用することにより、コスト効率の高い構造を実現しています。また、HyNetクラスターには、英国最大規模の産業エリアであるマンチェスター、リバプールなどの主要排出事業者が参加予定であり、排出抑制効果は国内最大級とされます。

Eniと英国政府は、2028年の運転開始に向けて建設を加速し、2025年内には主要施設の基礎工事を完了させる予定です。HyNetクラスターを核に、今後英国ではCCS認証クレジットの制度整備も進められる可能性が高く、あわせて要注目のトピックです。

参照:https://www.eni.com/en-IT/media/press-release/2025/04/eni-and-uk-reach-financial-close-for-the-liverpool-bay-ccs-project.html