世界最大のカーボンクレジット認証機関であるベラ(Verra)は2025年12月22日、天然ガス処理の過程で排出される二酸化炭素(CO2)を回収・永続的に貯留するプロジェクトを対象とした新モジュール「VMD0062」を公開した。
これは、同機関の検証済み炭素基準(VCS)プログラムにおける既存の炭素回収・貯留(CCS)手法「VM0049」を拡張するものである。本モジュールの導入により、産業プロセスで分離されたCO2の回収による温室効果ガスの排出削減量を、適正に定量化することが可能となった。

本モジュールの開発は、ベラが主導する最新の手法開発・レビュープロセスに従って進められた。開発資金は、米エネルギー企業のビーケーブイ・コーポレーション(BKV Corporation)が任意で提供している。ベラは、この資金提供がプロジェクトの登録や承認などの決定プロセスにおいて優先的な扱いを示唆するものではないことを強調した上で、民間資金による開発加速の事例として位置づけている。
ベラはこれまで、VM0049に対応するモジュールやツールを段階的に発表してきた。2024年10月には第一弾として、大気直接回収(DAC)を対象とした「VMD0056」、CO2輸送を規定する「VMD0057」、塩水帯水層や枯渇油ガス田への貯留を対象とした「VMD0058」を公開した。続く2025年4月には、バイオエネルギー由来のCO2回収(BECCS)に関する「VMD0059」や、CCSプロジェクトにおける非VCS由来のCO2計上ツールなどを提供している。
今後、ベラはVM0049の適用範囲をさらに広げるため、追加のモジュールやツールの開発を継続する方針である。天然ガス処理におけるCO2回収は、不純物として含まれるCO2を分離する既存工程を応用できるため、技術的なハードルが比較的低いとされる。今回の基準策定により、石油・ガス業界におけるCCSを活用したカーボンクレジット創出の動きが、2026年以降さらに活発化することが予想される。
今回のベラによる新モジュールの公開は、カーボンクレジット市場が「自然由来」から「技術由来」の除去、さらには「産業プロセスの排出回避」へと軸足を広げていることを象徴している。
特に、特定の企業(BKV社)が資金を提供して手法開発を後押しするモデルは、手法策定の遅れがボトルネックとなっていたCCS市場において、クレジット供給を加速させる実務的な突破口になるだろう。
日本のプラントエンジニアリング企業やエネルギー関連企業にとっても、自社のCCS技術をクレジット化するための国際的な「物差し」が整った意義は大きい。
参考:https://verra.org/verra-releases-new-module-for-carbon-capture-and-storage/


