ベラ(Verra)は2026年6月2日、政府主導かつ州スケールの森林炭素プログラムを初めて認証したと発表した。対象はアルゼンチン北東部のミシオネス州で、VCSのJurisdictional and Nested REDD+(JNR)枠組みに登録された。
特筆すべきは、個別プロジェクトに含まれない森林域について州政府がカーボンクレジットを生成する「Scenario 2」の適用が世界初である点だ。Scenario 2では、個別プロジェクトはプログラムの承認済みベースラインの下でネストし、排出削減量の計上整合性を担保する。
プログラムはミシオネス州政府が主導し、約300万ヘクタールの大西洋岸森林を対象とする。最初の6年間(2017〜2022年)で、約1,310万トンCO2の検証済み排出削減量を創出した。認証には複数の州機関、技術チーム、独立した検証機関(VVB)の調整を要した。
本件の制度的な含意は、準国家政府が国際炭素市場に参加可能なガバナンスを自ら構築しうることを実証した点にある。ミシオネス州財務相のアドルフォ・サフラン(Adolfo Safran)は、便益分配の仕組みを通じて地域へ成果を還元する方針を示し、高品質なカーボンクレジットを求める投資家の参画を呼びかけた。ベラは、この枠組みがアルゼンチン国内およびラテンアメリカ・アフリカ・アジアの管轄区域型アプローチへ波及すると見込む。
管轄区域型REDD+は、カーボンクレジットの品質をめぐる論点とも直結する。管轄区域全体で検証済み排出削減量を計上する構造は、プロジェクト間でベースラインやリーケージの扱いを個別最適化する余地を縮小させる。プロジェクト型REDD+で繰り返し問われてきた過大発行やベースライン操作への批判に対し、計上単位を引き上げることで一定の規律が働くとの期待がある。
本件は、森林由来カーボンクレジットのガバナンスを管轄区域単位へ引き上げる制度的な達成として位置づけられる。ただしREDD+の信頼性そのものを刷新するというより、その計上単位を引き上げる延長線上の前進と捉えるのが妥当である。
評価の第一の軸は、準国家政府が独力で国際炭素市場に接続しうるモデルを示した点にある。州機関、技術チーム、検証機関の調整を経た今回のプロセスは、他の準国家政府にとって再現可能な手順を提示する。
第二の軸は品質である。管轄区域全体での計上はプロジェクト型のベースライン個別最適やリーケージの問題を構造的に縮小させうるが、その実効性は管轄区域ベースライン自体の妥当性と参照期間の設定に左右される。Scenario 2が品質面の前進となるか否かは、この一点が決める。
参考:https://verra.org/verra-certifies-its-first-government-led-jurisdictional-forest-carbon-program-in-argentina/
