スイスが国内初のCO2輸送網構築へ 英Penspenが基幹パイプラインの設計受託

村山 大翔

村山 大翔

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スイスのインフラ開発企業であるCO2パイプライン・スイス(CO2 Pipeline Schweiz AG)は1月19日、国内全域を網羅する二酸化炭素(CO2)輸送ネットワークの構築に向けた初期設計調査を、英国のエンジニアリング大手ペンスペン(Penspen)に発注した。

本調査はバーゼルとチューリッヒを結ぶ主要回廊の技術設計を軸とし、2027年3月の完了を目指す。スイス政府が掲げる排出削減目標の達成に向け、炭素除去(CDR)および回収・貯留(CCS)を支える物理的なインフラ整備が本格化する。

今回の契約に基づき、ペンスペンは基幹パイプラインおよび関連ハブ、圧縮機ステーション、中間バルブステーションなどの技術設計を担当する。また、ルートの最適化やサイト選定の支援、経済性評価に加え、スイス国内の規制順守や輸送基準の策定に向けた指針も提供する。

本プロジェクトの最大の特徴は、将来的な国内のCO2パイプライン事業における共通の技術・評価基準を確立し、規制当局や事業者間の連携を円滑化する点にある。

ペンスペンは、英国のリバプール湾における「ハイネット(HyNet)」CO2輸送ネットワークや、アラブ首長国連邦(UAE)での高密度CO2パイプライン開発など、豊富な実績を持つ。同社のエンジニアリング・エネルギー移行担当ディレクターであるダレン・バートレット(Darren Bartlett)氏は「安全で拡張性のある炭素インフラを支える初期段階の設計調査への需要は世界的に高まっている」と述べ、本ネットワークが廃棄物焼却施設やセメント工場など、多様な排出源を網羅する設計であることを強調した。

スイス政府は近年、ネットゼロ達成に向けてCDRの購入を検討する新たな提案を行うなど、炭素管理政策を加速させている。CO2パイプライン・スイスのドミニク・ヴロダルチャク(Dominik Wlodarczak)最高経営責任者(CEO)は「パイプライン設計におけるペンスペンの包括的な専門知識と、顧客中心のアプローチを活用できることを嬉しく思う」と期待を寄せた。

本プロジェクトにより、スイス国内で回収されたCO2を国外の貯留地へ輸送する、あるいは資源として有効利用するための基盤が整うことになる。

スイスは、クライムワークス(Climeworks)に代表される直接空気回収(DAC)技術などのCDRにおいて世界をリードする存在だ。しかし、内陸国であるスイスにとって、回収したCO2を北海などの大規模貯留地へ運ぶためのインフラ確保が長年の課題であった。

今回のパイプライン網の構築は、点在する「回収点(排出源)」と「国境を越えた輸送路」をつなぐ、まさにミッシングリンクを埋める動きである。

特に、セメント工場や廃棄物焼却施設といった削減困難なセクター(Hard-to-abate)の脱炭素化には、物理的な輸送網が不可欠だ。

日本の事業者にとっても、スイスの「国内基準の共通化」というアプローチは、将来的な日本のCO2広域輸送網の整備における重要な先行事例となるだろう。

2027年の調査完了後、実際の建設に向けた投資判断が次の焦点となる。

参考:https://www.penspen.com/news/penspen-awarded-major-co%e2%82%82-pipeline-study-in-switzerland/