米国の独立系研究機関リソーシズ・フォー・ザ・フューチャー(Resources for the Future、以下RFF)は20日、炭素価格制度に関する対話の場を主催してきたワシントンD.C.拠点の団体「プライシング・カーボン・イニシアチブ(Pricing Carbon Initiative、以下PCI)」を吸収し、同団体の活動を引き継ぐと発表した。PCIは独立組織としての活動を終了するが、RFFが主催する「プライシング・カーボン・ダイアログ」として継続され、炭素価格政策に関する建設的な議論と社会的理解の促進を目的とした使命が維持される。
RFFは、PCIが築いた300名超の政策立案者、企業幹部、専門家のネットワークを活用し、炭素価格を巡る議論の場を拡大する方針だ。RFFで炭素価格研究を率いるマーク・ハフステッド氏は「RFFの専門知とPCIのネットワークを組み合わせることで、単独では成し得なかった効果的な議論を促進できる」と述べ、「PCIの使命を新しい形で発展させることに興奮している」と強調した。
PCIは2011年の設立以来、超党派的な炭素価格政策や市場型気候対策を議論するフォーラムを年数回開催してきた。議論はチャタムハウス・ルールに基づき、率直な意見交換を促す形式で行われてきた。RFFは設立当初からこれらの対話に参加し、政策設計上の課題を研究面から補完してきた経緯がある。
今回の統合により、PCIの会合はRFFのクライメート関連イベントの一環として位置づけられる。PCIが蓄積してきた知見はRFFの研究基盤を強化し、連邦および州レベルの政策立案者への助言や、炭素国境調整措置(Carbon Border Adjustment)を含む最新の研究にも活かされる見通しだ。
PCIのディレクターであるダニー・リヒター氏は「炭素価格政策は長年にわたり気候危機対応の中心的手段として議論されてきた。政治的スペクトラムを越えてこの議論を継続する意義は大きい」と語り、「PCIが築いた信頼関係の上に、RFFが新たな展開を加えることを心から歓迎する」と述べた。リヒター氏は今後RFFのコンサルタントとして移行を支援し、将来的な資金調達の確立にも関与する。
RFFのビリー・パイザー代表兼CEOは「我々は専門家と政策立案者を結ぶハブとしての役割を誇りに思う。PCIとの統合によってこの役割をさらに強化できる」とし、「10年以上にわたるPCIの成果を確かな形で引き継ぐ」と述べた。
RFFは今後数カ月以内に、新たな炭素価格関連ウェビナーやイベントシリーズの企画を開始する予定である。RFFは、環境・エネルギー・資源政策に関する独立した経済分析を行う非営利機関として、米国内で最も信頼される研究機関の一つに数えられている。
参考:https://www.rff.org/news/press-releases/rff-adopts-the-pricing-carbon-initiative/