フィンランド発の炭素除去(CDR)クレジットの認証機関Puro.earthは2025年12月18日、認定施設数が100カ所の大台に到達し、同年のCO2除去証書(CORC)発行量が前年比60%増の65万トンに達したと発表した。
ヤン・ウィレム・ボーデ(Jan-Willem Bode)社長は年次報告の中で、機関投資家による資産クラス化や長期契約の増加といった市場構造の変化に触れ、CDR市場が初期のイノベーション段階から、信頼できる「社会インフラ」へと移行したとの見解を示した。
圧倒的な市場シェアと「資産クラス」への進化
Puro.earthが公開した2025年の年次データは、耐久性CDR市場の急激な成熟を裏付けるものとなった。同プラットフォームを通じて発行されたCORCの市場シェアは、納入されたCDR全体の74%を占めるに至った。2025年単年での発行量は65万CORC(65万トン相当)で、累計発行量は140万トンに達した。特筆すべきは需要側の動きであり、クレジットのリタイア数は前年比76%増の34万4,026トンを記録している。
ボーデ社長は声明で、「市場は閾値を越えた」と指摘した。初期の少数バイヤーに依存していた構造から、フロアプライス(最低価格保証)や長期オフテイク契約、ポートフォリオアプローチといった高度な購入構造が登場しており、投資家がCDRを「融資可能な資産クラス」として扱い始めているという。
100番目の認定とインフラ整備の加速
記念すべき100番目の認定施設となったのは、ベルリンを拠点とするバイオマス貯蔵プロバイダー「Carbonsate」だ。認定施設数は前年比34%増となり、世界22カ国からクレジットが創出されている。
NasdaqによるシリーズB出資を受けた同社は、市場の拡大に合わせて「認証インフラ」としての機能を強化している。
- 監査の迅速化
平均監査時間を41%短縮し、最短6日で完了する体制を構築。 - デジタル統合
デジタルMRV(計測・報告・検証)用API「Puro dMRV Connect」を展開し、データ検証と発行プロセスの即時性を向上。 - CCS+との統合
大規模な技術的除去(BECCSやDACCS)を見据え、CCS+イニシアティブと連携。単一のガバナンス下での認証を可能にした。
バイオ炭が牽引する流動性
現在、市場の主力商品は依然としてバイオ炭である。Puroのレポートによれば、バイオ炭由来のCORCは市場納入量の43%を占め、発行量は前年比166%増と急伸している。注目すべきはその流動性だ。発行されたCORCの93%が一次転売され、発行から移転までの平均期間は47日と短い。これは、生成されたカーボンクレジットが滞留することなく、高い需要に吸収されていることを示唆している。
制度的裏付けと今後の展望
Puro.earthは、ボランタリーカーボンクレジット市場の品質基準を定めるICVCMのプログラムレベル承認を取得済みであり、欧州の炭素除去認証枠組み(EU CRCF)への対応も進めている。
ボーデ社長は、「我々はイノベーションから信頼された市場インフラへと移行している。2026年に向けて、規制や金融の方向性とより整合した、顧客中心のプラットフォームになる」と結んだ。
日本企業への示唆
本ニュースは、CDR市場が「作れば売れる」時代から、金融商品としての厳格な管理が求められるフェーズに入ったことを示している。特に重要なのは、PuroがCCS+イニシアティブと統合した点だ。これにより、日本企業が得意とするBECCSやDACCSといった工学的除去技術が、Puroの高価格・高信頼性マーケットに乗るルートが確立された。
また、バイオ炭クレジットの高い流動性(平均47日で転売)は、地方自治体や農業法人と連携したバイオ炭プロジェクトが、短期的なキャッシュフローを生む有力な手段になり得ることを示唆している。日本の商社やデベロッパーは、ICVCM承認済みという「お墨付き」を持つPuro基準でのプロジェクト組成を、より一層加速させるべき時期に来ている。
参考:https://www.linkedin.com/company/puro-earth/posts/?feedView=all
参考:https://puro.earth/blog/our-blog/357-2025-a-year-from-innovation-to-infrastructure?utm_content=362285883&utm_medium=social&utm_source=linkedin&hss_channel=lcp-14052561


