Microsoft、低炭素セメントに戦略的投資 住友商事とも覚書を締結する注目スタートアップが「ゼロCO2セメント」拡大へ

村山 大翔

村山 大翔

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米マイクロソフト(Microsoft)は9月23日、気候イノベーション基金(CIF)を通じて、米カリフォルニア州拠点のグリーンセメント企業フォルテラ(Fortera)に戦略的投資を行った。資金は年間40万トン規模の商業用プラント建設に充てられるほか、同社の低炭素セメント「ReAct」やカーボンクレジットの調達権を確保し、サプライチェーン全体にわたるScope3排出削減に活用する。

マイクロソフトのサステナビリティ市場・CIF担当ゼネラルマネジャー、ブランドン・ミドー氏は「2030年のカーボンネガティブ目標に向け、長期的な投資を進めている。企業投資は低炭素セメントのような新興市場の立ち上げと拡大を後押しできる」と述べた。

フォルテラの中核技術「ReCarb」は、通常のポルトランドセメントに比べ二酸化炭素(CO2)排出を70%削減できる。既存のセメント設備にボルトオン(追加設置)できる仕組みで、稼働を止めずに導入が可能だ。コストも従来セメントと同水準を目指しており、産業全体での拡張性が高いとされる。

同社のライアン・ギリアム最高経営責任者(CEO)は「マイクロソフトの投資は、低炭素建材市場における当社の商業規模プラントの意義を示すものだ」と強調した。マイクロソフトのインパクト投資担当グループマネジャー、エリック・ウロサ氏は、フォルテラの取締役会にオブザーバーとして参加する。

フォルテラは現在、カリフォルニア州レディングにある旗艦工場を拠点に、豪グレイモントなど大手と提携。すでに実際の建設プロジェクトにも供給を開始している。また、住友グループとの提携によりアジア展開も進めており、日本市場でも低炭素セメントの調達やカーボンクレジットの活用が注目される可能性が高い。

セメントは世界のCO2排出量の約7%を占めるとされ、排出削減はカーボンクレジット市場や炭素除去(CDR)の拡大に直結する。今回の投資は、IT大手による「需要シグナル」が業界全体の脱炭素化を加速させる象徴的事例となる。

今後、フォルテラは2026年までに商業用プラントの稼働を開始し、ゼロCO2セメント生産への道を拓く計画である。

参考:https://www.linkedin.com/posts/fortera_climateinnovation-decarbonization-lowcarboncement-activity-7376246582511329280-fnxO

参考:https://www.businesswire.com/news/home/20250923902212/en/Fortera-Secures-Microsoft-Funding-for-Low-Carbon-Cement-Production