CO2除去ビジネス関係者400人が集結 GenZero Climate Summit 2025閉幕

村山 大翔

村山 大翔

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先週、シンガポールで開催された「GenZero Climate Summit 2025」で、炭素市場と脱炭素資金動員の未来に関する議論が行われた。VerraVCMI、世界銀行などの要人が参加し、「トランジションクレジット」の制度化と、炭素市場の信頼回復に向けた国際的な連携強化が示された。

Verraが新制度を発表 トランジションクレジットの国際的枠組みが始動

VerraのCEOマンディ・ランバロス氏は、石炭火力の早期退役と再生可能エネルギーへの移行を支援する「Coal to Clean Credit Initiative(CCCI)」の方法論がVerified Carbon Standard(VCS)プログラムで正式承認されたと発表。これにより、トランジションクレジットが国際的な炭素市場で活用可能になり、特にアジア地域での脱炭素に弾みがつくと期待されている。

これに呼応するかたちで、三菱商事およびその子会社Diamond Generating Asiaが、フィリピンの246MW石炭火力発電所を2030年までに早期退役させるプロジェクトへの参加を表明。ACENおよびKeppelと連携し、地域社会への正当な移行(Just Transition)を支える構想を進める。

規制・信頼性・買い手行動の転換に向けた「共同声明」も発出

GenZero、ICVCM、VCM、世界銀行は共同で、信頼ある炭素市場の実現に向けた「行動要請(Call to Action)」を公表。政策立案者に対し、以下の5つの優先事項への取り組みを呼びかけた。

  1. Article6と補完可能な民間行動の促進
  2. 削減クレジットと除去クレジットの両立
  3. 自然・技術両アプローチの活用
  4. 各国政府の主導性強化
  5. 市場の透明性・整合性の確保と信頼性ある主張の実現

この共同声明には、VerraやGold Standard、Environmental Defense Fund、Conservation International、WBCSDなど40以上のグローバル団体が賛同。炭素クレジットの品質・真正性・説明責任に対するグローバルな危機感と連帯が確認された。

Scope3排出への対応強化 VCMI新ガイドラインも発表

サミット2日目には、TemasekのEcosperity Action Hubにて、企業のScope3(サプライチェーン排出)対応を支援する「VCMI Scope 3 Action Code」が発表された。これは、排出ギャップの特定、障壁の開示、高品質なクレジット活用を通じた信頼ある削減アクションを可能にする実務的な枠組みだ。

GenZeroのFrederick Teo CEOとVCMIのMark Kenber氏は「Scope3は多くの企業にとって最大の脱炭素課題であり、信頼あるガイドラインによる支援が不可欠」と指摘。特に中小企業にとっては、炭素会計の簡素化と具体的な行動指針が着手の鍵となると強調した。

脱炭素は道徳的要請から「経済的合理性」へ

閉会のスピーチでTeo氏は「脱炭素はもはや理念ではなく、コスト効率に基づく商業的論理として説得力を持つ段階に入った」と語り、グリーンプレミアムではなく「グリーンディスカウント」を重視すべき時代の到来を示唆した。

サミットには400名以上が集い、「気候行動の麻痺を打破する」ことをテーマに、公共・民間セクターの垣根を越えた連携が確認された。今後、アジア発の信頼あるトランジションクレジット市場の拡大と、企業のScope3対応加速が注目される。

参照:https://www.linkedin.com/posts/genzero_gcs2025-financing-decarbonisation-activity-7325547587296464896-uKVb