フランス政府は2026年2月13日、国内の排出集約型産業7拠点における脱炭素化を加速させるため、総額16億ユーロ(約2,608億円)の支援パッケージを発表した。
エリゼ宮(仏大統領府)の主導による本施策は、二酸化炭素回収・有効利用・貯留(CCUS)を中核に据え、今後15年間にわたり資金を投じる。これにより、年間約380万トンのCO2削減が見込まれており、これはフランスが2030年までに掲げる産業部門の排出削減目標の約4分の1に相当する。
今回の選定プロジェクトは、電化のみでは排出削減が困難な「ハード・トゥ・アベート(削減困難)」セクターであるセメント、アルミニウム、化学分野が中心だ。全7事業のうち、4事業にCCUS技術が導入される点が最大の特徴である。
具体的には、ハイデルベルグ・マテリアルズ(Heidelberg Materials)、ホルシム(Holcim)、ヴィカ(Vicat)が運営するセメント工場、およびアルミニウム・ダンケルク(Aluminium Dunkerque)の施設が採択された。また、化学分野ではシャンスコ(Syensqo)、イネオス(Ineos)、ユーロリジン(Eurolysine)によるプロジェクトが支援対象となっている。
これらCCUS関連の4事業が計画通り実施されれば、年間300万トン以上のCO2が回収される見通しだ。ハイデルベルグ社の「GOCO2」プロジェクトでは年100万トン、ヴィカ社の「VAIA」イニシアチブでは年120万トンの回収を目指す。これらの大規模な回収量を支えるためには、フランス国内および近隣諸国を結ぶ広域なCO2輸送・貯留ネットワークの構築が不可欠であり、インフラ整備の加速が急務となっている。
本プログラムは、投資戦略「フランス2030」の一環として実施された「大規模産業脱炭素化プロジェクト」の公募に基づく。応募条件は、申請補助金額が2,000万ユーロ(約32億6,000万円)以上で、かつ欧州域内排出量取引制度(EU ETS)の対象セクターであることだ。
今回の公募の特徴は、CO2削減コスト(abatement cost)に基づき、最も効率的なプロジェクトに資金を配分する「競売方式(オークション)」が採用された点にある。採択されたプロジェクトの平均削減コストはCO2トン当たり22ユーロ(約3,580円)と極めて低く、公的資金の投入対効果が非常に高いことが示された。フランス政府は既に2026年内の第2弾公募を再開しており、CCUSと電化を両輪とした産業構造の転換をさらに推し進める構えだ。
今回のフランスの動向で注目すべきは、補助金配分に「削減コストベースの競売」を取り入れた点だ。
これは、カーボンクレジットの市場価格(EU ETS価格)と実際の対策コストの差額を補填する「カーボン・コントラクト・フォー・ディファレンス(CCfD)」に近い考え方であり、限られた予算で最大の削減効果を狙う極めて合理的な手法と言える。
日本企業にとっても、CCUSインフラの構築は避けて通れない課題だ。特にフランスのような「共同輸送ネットワーク」の構築は、自社単独での投資が困難な日本の中小・中堅の製造業者にとって、将来的に低コストで脱炭素化を達成するための重要なモデルケースとなるだろう。
プラントエンジニアリングや分離膜技術を持つ日本企業は、こうした欧州のインフラ整備需要を好機と捉えるべきである。
