ドイツ政府は6月27日、2025年度連邦予算案に二酸化炭素除去(CDR)の予算を初めて正式に盛り込んだ。2045年までのネットゼロ達成を掲げる中で、CO2除去技術の研究開発だけでなく「スケール拡大」を目的とした予算化であり、欧州政府によるCDR市場形成への具体的な一歩となる。予算案は9月に連邦議会で最終承認される見込みだ。
ドイツネガティブエミッション協会(DVNE)はSNS上で喜びの声明を発表した。DVNEは除去証書(カーボンクレジット)の政府購入や国内除去プロジェクトの公的資金調達開始をこれまでも政府に求めており、今回の予算案を「未来の本格予算獲得に向けた土台」と位置付けている。
DVNEは声明で「2025年度のCDR予算は象徴的な規模だが、脱炭素社会の中核インフラとしてのCDR市場創出の起点になる」と指摘した。2026年度予算での大幅なCDR予算増額を目指し、政府交渉を加速する方針だ。
今回の予算案はラース・クリングバイル財務相が発表。金額の詳細は示されていないものの、除去量に応じた「カーボンクレジット」の政府購入や国内技術の事業化支援が今後の議論の焦点となる。
世界のCDR市場では米国が最大規模の支援枠組みを持つが、政府支援の不透明感が続く中で、北欧諸国や英国が欧州で先行して市場整備を進めている。カナダやアジアでも支援拡充の動きが続いており、長期的な政策支援の積み重ねが市場の主導権を左右するとみられる。
ドイツが予算化に踏み切った背景には、排出削減だけでなく大気中CO2除去を並行実装しなければネットゼロ目標は達成困難との認識が広がっていることがある。CDRの資金拡充と市場形成の行方は、9月の連邦議会最終承認と2026年度予算編成が重要な節目となる。