CO2除去、CDR業界の給与中央値が12%下落し1,500万円水準へ 「実装フェーズ」本格化で現場回帰が加速

村山 大翔

村山 大翔

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二酸化炭素除去(CDR)特化型の求人プラットフォーム「CDRjobs」は2025年12月10日、業界の給与動向と労働市場のトレンドをまとめた年次報告書「2025 CDR Salary Report」を発表した。

2024年10月から2025年9月までの約2,500件の求人データを分析した結果、業界全体の給与中央値は前年比で約12%減少し、勤務形態もリモートワークから現場(オンサイト)勤務へと急速にシフトしている実態が明らかになった。これはCDR業界が初期の研究開発段階を脱し、プラント建設や運用を行う「実装(Deployment)フェーズ」へ移行していることを強く示唆している。

給与水準の調整局面と地域格差

報告書によると、CDR業界のグローバルな給与中央値は10万108ドル(約1,500万円)となり、2024年の11万5,000ドル(約1,725万円)から12%下落した。この減少要因として、市場の成熟に加え、比較的給与水準の低い地域での雇用拡大や、広範な経済状況の影響が指摘されている。

特に米国市場の影響力は大きく、米国データを除外した場合のグローバル中央値は7万ドル(約1,050万円)まで低下し、前年比で30%の大幅な減少となる。これは、CDR開発のハブが欧米の主要都市から多様な地域へと広がりつつある一方で、依然として米国とそれ以外の地域との間に大きな報酬格差が存在することを示している。

「現場回帰」が進む勤務形態

今年度の調査で最も顕著な変化の一つが、勤務形態の「現場回帰」だ。オンサイト(出社)勤務を求める求人の割合は、前年の42%から54.5%へと大幅に増加した。一方で、リモートワークの求人は29%から14.9%へとほぼ半減している。

このトレンドは、多くのCDRプロジェクトがデスクワーク中心の設計・計画段階を終え、実際の設備稼働やフィールドワークを伴う運用段階に入ったことを反映している。職種別に見ても、エンジニアリング職(38%)に次いで、プロジェクト運営・管理職が35%を占めており、これら2つのカテゴリーだけで求人全体の7割以上を構成している。

技術分野のトレンドと透明性の課題

技術分野別(サブインダストリー)では、直接空気回収(DAC)が依然として最大のシェア(28.8%)を維持しているものの、前年の34.5%からは縮小した。代わってバイオマス炭素除去・貯留(BiCRS)が23.2%へと伸長し、風化促進(Enhanced Weathering)などもシェアを伸ばすなど、技術の多様化が進んでいる。

一方で、業界の課題として「給与の透明性」が挙げられる。求人票に給与情報を記載している案件は全体の28%にとどまり、前年の25%からは微増したものの、依然として低い水準にある。また、実際の炭素除去量の60%がグローバルサウス(主にボリビアやインド)から供給されているにもかかわらず、雇用の92%がグローバルノース(北米・欧州)に集中しており、データの偏在と経済的機会の不均衡も浮き彫りとなった。

CDRjobsは、業界がネットゼロ目標達成に向けて数百万人の雇用を創出する必要があるとし、公平な報酬体系と多様な人材の確保が急務であると結論付けている。

参考:https://www.cdrjobs.earth/2025-cdr-salary-report