アルゼンチン北東部のミシオネス州が、ベラ(Verra)のJNRフレームワークにおいて、地方政府主導の森林保全プログラムとして世界で初めて認証を取得した。
ベラは6月2日、同州をVCSプログラム下で登録したと発表した。対象は土着の大西洋岸森林約300万ヘクタールで、2017年から2022年までの6年間に約1,310万トン(CO2換算)の検証済み削減量を計上した。
シナリオ2での初認証
JNRフレームワークの「シナリオ2」での認証は世界初となる。
シナリオ2は、個別プロジェクトでカバーされていない森林域について政府がカーボンクレジットを創出することを認める経路であり、域内のネスト型プロジェクトはプログラムの承認済みベースラインを用いることが条件となる。これにより域内全体での排出削減量の整合的な計上と二重計上の防止が図られる。
プロジェクト単位のカーボンクレジットが個別の土地区画を対象とするのに対し、管轄区域型プログラムは行政区域全体を単位として排出削減量を計上する。
高い整合性評価と価格水準
本プログラムは、カーボンクレジット格付け機関のシルベラ(Sylvera)から発行前評価でA-AAの格付けを取得した。これは世界のREDD+イニシアチブのなかでも最高水準の整合性に位置づけられる評価であり、保守的かつ厳格な炭素会計と、便益配分メカニズムを含む環境・社会セーフガードへの適合を根拠とする。
業界報道によれば、州当局はカーボンクレジット価格のフロアを1トンあたり約15ドル(約2,400円)に設定する方針で、これは世界の主要な管轄区域型イニシアチブと同水準にある。スイス系商社のメルクリア(Mercuria)が早期投資家として関与している。州財務相のアドルフォ・サフラン(Adolfo Safrán)は、質の高いカーボンクレジットに関心を持つ投資家の参画を呼びかけている。
もっとも、REDD+のベースライン設定をめぐっては過大発行の事例が指摘されてきた経緯があり、管轄区域型への移行はこうしたプロジェクト単位の信頼性課題への構造的対応という側面を持つ。
中南米・アフリカ・アジアへの展開
ベラは、ミシオネスのモデルがアルゼンチン国内および中南米・アフリカ・アジアの他国における同様のプログラム開発を加速させると見込む。これらの地域では、気候ファイナンスへの管轄区域型アプローチの検討が進んでいる。
便益配分メカニズムを通じて、収益は数十年にわたる保全努力を担ってきた地域社会へ直接還元される予定である。
編集部の視点
本件は、管轄区域型REDD+への移行という既存の方向性のなかに位置づけられる事例である。世界初という形式的な新規性よりも、プロジェクト単位から行政区域単位へという市場の構造的移行が一段進んだ点に実質的な意味がある。
シルベラの高格付けと1トンあたり15ドル前後という価格フロアは、規模よりも整合性を前面に置いた設計を示す。管轄区域型のベースラインはプロジェクト単位で繰り返されてきた過大発行リスクを構造的に抑制しうるが、その実効性は最終的にベースライン設定とモニタリングの厳格さに左右される。
同時に、地方政府が自らの森林保全実績をカーボンクレジットとして発行し、便益を域内に還元する設計は、途上国の準国家主体にとって気候ファイナンスへの新たな経路となる。中南米・アフリカ・アジアでの横展開が現実に進むかは、各ホスト国のガバナンスと検証体制が同等の水準を確保できるかにかかっている。
参考: https://verra.org/verra-certifies-its-first-government-led-jurisdictional-forest-carbon-program-in-argentina/
