群馬で森林の生物多様性を評価 カーボンクレジットの品質向上とコベネフィットを追求

村山 大翔

村山 大翔

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1月26日、日立システムズは、群馬県森林組合連合会および京都大学発スタートアップのサンリット・シードリングスと共同で、群馬県内約50ヘクタールの森林を対象としたネイチャーポジティブ推進の実証実験を開始した。

本プロジェクトは、ドローンによる森林解析と環境DNA分析を組み合わせることで、森林の生物多様性を定量的に評価し、水源涵養機能の向上をめざした最適な整備計画を策定するものである。

世界的にTNFDへの対応が急務となる中、科学的根拠に基づいた森林管理を通じて、高付加価値なカーボンクレジットの創出支援体制を強化する。

今回の実証では、日立システムズが保有する森林解析技術と、サンリット・シードリングスの生物多様性分析技術である「バイオスフィア・ビューワー(Biosphere Viewer)」を統合する。環境中に存在する生物由来のDNAを解析する環境DNA(eDNA)手法や地理情報システム(GIS)解析、野外調査を用いることで、対象森林の生態系を詳細に可視化する。

これらのデータに基づき、群馬県森林組合連合会が推進する森林整備において、水源涵養機能の回復に資するデザインや効率的な間伐施策を策定し、自然資本の価値最大化を図る。

背景には、2022年の生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)で採択された昆明・モントリオール生物多様性枠組がある。2030年までに自然の損失を食い止め回復させるネイチャーポジティブの実現は国際的な至上命題となっており、企業には脱炭素(CO2吸収)だけでなく、生態系保全への寄与も同時に求められている。

日立システムズは、すでに展開しているカーボンクレジット創出支援サービスに本実証の成果を組み込み、クレジットの「質の担保」として生物多様性評価を位置づける方針だ。

日立システムズは、今回の群馬県での知見をもとに、全国約300拠点のネットワークを活用して自治体や森林所有者への展開を加速させる。森林由来のカーボンクレジット市場では、単なる炭素吸収量だけでなく、生物多様性などの共同便益(コベネフィット)を備えたクレジットが国際的に高く評価される傾向にある。同社は現状把握から施策策定、実施までをワンストップで支援することで、環境省が掲げる、陸と海の30%以上を保全する「30 by 30」目標の達成にも寄与する考えだ。

本実証の成果は2026年度以降の本格的な商用展開に反映される見通しであり、ネイチャーポジティブと経済活動の両立に向けた国内森林活用の先駆的な事例となることが期待される。

今回の実証実験は、日本の森林由来カーボンクレジット(J-クレジット等)が「炭素吸収」という単一の価値から、「自然資本の総合評価」へとシフトする重要な転換点を示唆している。

現在、国際的なクレジット市場ではコベネフィットがキーワードとなっており、生物多様性に配慮されていない単一樹種の植林などは、グリーンウォッシュとして批判されるリスクがある。

日立システムズがITと環境DNAを掛け合わせることで、これまで曖昧だった「森の豊かさ」を数値化したことは、クレジットにプレミアム価格を付加する強力な武器になるだろう。

参考:https://www.hitachi-systems.com/news/2026/20260126.html