「グローバル炭素会計基準」構築へ国際連携 Carbon Measuresと国際商業会議所が専門家委員会を設立

村山 大翔

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炭素会計基盤の国際整備に向け、カーボン・メジャーズ(Carbon Measures)と国際商業会議所(ICC)は、金融会計原則をモデルとした炭素排出量会計制度の策定を目的とする「炭素会計専門家委員会(Technical Expert Panel on Carbon Accounting)」の設立を発表した。委員会は各国の学術界、産業界、市民社会の専門家で構成され、S&Pグローバル・コモディティ・インサイツが独立した知見パートナーとして参画する。

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本委員会は、炭素排出量を企業・製品単位で正確かつ一貫して測定・報告するための「グローバル炭素会計基準」の策定を目指す。目的は、金融会計のように透明で検証可能な仕組みを整備し、バリューチェーン全体で排出量が重複計上されず、正しく帰属されるようにすることにある。

委員会の共同議長には、カーボン・メジャーズの最高経営責任者(CEO)エイミー・ブラキオ氏と、オックスフォード大学ブラバトニク公共政策大学院のビジネス・公共政策学教授で「E-ledgers Institute」共同創設者のカーティク・ラマンナ氏が就任する。

S&Pグローバル(S&P Global)の一部門であるS&Pグローバル・コモディティ・インサイツは、独立知見パートナーとして、排出量算定やデータ品質、ガバナンスの改善策を提示する。ICCは今後、委員やアドバイザリーボード、知見パートナーへの参加希望を募る予定だ。

ブラキオ氏は声明で「グローバルな会計基準の確立は、透明性を高め、政策立案者が市場メカニズムを活用して排出削減を促進するために不可欠だ」と述べた。さらに、「正確なデータなしには効果的な排出管理は不可能だ」と強調した。

ICCのアンドリュー・ウィルソン副事務総長は、「ICCは約100年にわたり国際的な標準策定を支援してきた。170カ国・4,500万社のネットワークを持つICCは、炭素追跡の精度向上を求める強い需要を把握している」と述べた。

ラマンナ教授は、「約90年前、GAAP(一般に認められた会計原則)が資本市場を拡大させたように、今こそサプライチェーン排出量に対する厳格で中立的な会計原則が必要だ」と指摘し、「これにより資本主義の力を脱炭素化に活用できる」と語った。

また、S&Pグローバル・コモディティ・インサイツの共同社長デイブ・アーンズバーガー氏は、「本取り組みは、製品単位での排出量算定・報告の調和に向けた重要な一歩だ。われわれの市場データと分析知見がその実現を支える」と述べた。

委員会は今後、既存の炭素会計手法の比較検証、指針原則の策定、標準化団体・政策当局への提案、実装ロードマップの作成を進める。さらに、データ品質・手法・統治体制の改善を提言し、世界的な合意形成を図る。最終的には、報告書や査読付き論文の公表を通じ、国際的な標準策定に向けた基盤を整える方針だ。

カーボン・メジャーズは、ブロックチェーン技術を応用した「台帳型炭素会計システム」を提唱し、検証可能な排出データの整備を推進している。今回のICCとの連携は、企業会計のように一貫性のある炭素会計を実現する国際的試みとして注目される。日本企業にとっても、サプライチェーン排出(スコープ3)報告義務への対応やカーボンクレジットの正当な算定に直結する動きといえる。

委員会の初期成果は2026年前半にも中間報告として公表される見通しであり、今後の国際標準化議論の行方が注目される。

参考:https://www.businesswire.com/news/home/20251027348594/en/Carbon-Measures-and-International-Chamber-of-Commerce-Launch-Technical-Expert-Panel-on-Carbon-Accounting