地球温暖化の抑制に向けて、多くの企業や自治体、消費者が自らの活動で排出したCO2を「オフセット（相殺）」する動きが広がっている。CO2排出ゼロを目指す取り組みの一環として用いられるのが「カーボンオフセット」である。
本記事では、カーボンオフセットの基本概念から具体的な手法、市場の仕組み、関連用語までを解説する。これを読めば「カーボンオフセットとは何か」が体系的に理解できるはずだ。
カーボンオフセットとは
カーボンオフセット（Carbon Offset）とは、自らが排出したCO2などの温室効果ガス（GHG）を、他の場所や活動での削減・吸収量によって埋め合わせる（相殺する）考え方である。英語ではCarbon Offsettingとも呼ばれる。
具体的には、ある企業が自社工場で10トンのCO2を排出したとする。その同量を、森林保全プロジェクトや再生可能エネルギー設備の導入などを通じて削減・吸収された分で穴埋めし、実質的に「排出ゼロ」に近づける仕組みを指す。
カーボンオフセットとカーボンクレジットの関係
カーボンオフセットを実行するために利用されるのが「カーボンクレジット」である。カーボンクレジットとは、「1クレジット＝1トンのCO2e（二酸化炭素換算）削減または吸収」を証明する証書であり、オフセット量を市場で売買可能な形にしたものを指す。
すなわち、カーボンオフセットとは「カーボンクレジットを購入・無効化（償却）することで、自社の排出量を相殺する行為」と言い換えられる。企業や個人は、信頼性のあるプロジェクトから発行されたカーボンクレジットを取得することで、自らのCO2排出を相殺できるのである。
カーボンオフセットを活用する際のポイント
カーボンオフセットを適切に活用するためには、以下の手順と留意点が重要となる。
排出量の正確な算定
出発点となるのは、自社の排出源を特定し、Scope 1、2、3（自社からの直接排出、エネルギー起源の間接排出、サプライチェーン全体の排出）それぞれの排出量をCO2eで正確に算定することである。自らがどれだけ排出しているかを把握しなければ、オフセットすべき量も決定できない。
質の高いクレジットの選定
信頼性の高い認証機関の基準に準拠したカーボンクレジットを選定する必要がある。MRV（測定・報告・検証）体制が整っており、実態のある削減・吸収が行われているプロジェクトを選ぶことが肝要である。
ダブルカウントの防止と管理
ダブルカウントを防ぐため、カーボンオフセットに用いたクレジットの購入履歴や証書を厳格に管理しなければならない。使用したクレジットは確実に無効化し、他者が再利用できないようにする手続きが必要である。
活用の優先順位と留意点
カーボンオフセットは有用な手段であるが、単に購入すれば良いというものではない。プロジェクトが地域社会に与える影響や、長期的な維持管理体制については慎重な検討が必要である。
また、オフセットだけに依存せず、まずは自社内での省エネや再生可能エネルギー導入など、実質的な削減努力を優先して進めることが、持続可能な気候変動対策において不可欠である。「削減しきれない排出量」に対してオフセットを適用するという優先順位を守ることが重要だ。
まとめ
カーボンオフセットは、自社や個人が排出した温室効果ガスを、信頼できる他者の削減・吸収活動によって相殺する手法である。
カーボンクレジットを通じたオフセットは、カーボンニュートラルを目指す上で有効な仕組みであるが、MRVや認証基準をクリアした「質の高いクレジット」を選ぶことが成功の鍵となる。まずは自社の排出量を可視化し、削減努力を行った上で、信頼性の高いオフセット先を検討されたい。正しく活用することで、地球温暖化対策への貢献は確実に前進するだろう。
