CCUS業界がEU・UK ETSリンクの早期規制明確化を要求

カーボンクレジット.jp 編集部

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炭素回収・貯留協会(CCSA)は2026年6月、エネルギー・産業・エンジニアリング大手を含む50超の関係者と連名で、欧州委員会と英国政府に宛てた公開書簡を発出した。両者がコミットしているEU・英国両排出量取引制度(ETS)のリンクについて、タイムラインとマイルストーンの明確化を求める内容である。

署名にはドラックス(Drax)、エニ(Eni)、エンジー(ENGIE)、ホルシム(Holcim)といった欧州のエネルギー・産業大手が名を連ねた。

書簡は、規制の不確実性が越境CCUS・CDR案件およびCO2輸送インフラの整備を停滞させ、投資判断を遅らせていると警告する。

書簡が掲げる3つの要求

CCSAらが求めるのは、第一にETSリンクに至るマイルストーンを示した具体的な実装ロードマップである。

第二に、越境で回収・輸送・貯留されるCO2の法的承認を直ちに確定させることである。複数のEU・英国間案件は、この法的取極めが未整備であるために停滞しているとする。

第三に、次回EU-UK首脳会合で署名が想定される合意の形態について、明確な情報開示を求めている。

2026年を正念場とする業界の主張

書簡は、2026年が欧州CCUS部門にとって複数案件が並行して進む節目の年であると位置づける。CCUS案件はリードタイムが長く、2030年の気候・脱炭素目標に間に合わせるには早期の前進が不可欠だという論理である。

ただし現状では、越境輸送・貯留のガバナンスが定まらないために、本来進むべき投資決定が先送りされていると指摘する。

ETSリンクがもたらす経済的意義

EUと英国のETS枠組みの整合は、両地域にとって複数の実利を持つとされる。

最も直接的なのは通商面である。リンクが成立すれば、EUが導入を進める炭素国境調整メカニズム(CBAM)の対象から両地域の産品が相互に除外される見通しで、英国側は年間8億ポンド(約1,710億円)規模と試算される関税負担を回避できるとされる。

加えて、両市場の統合は汎欧州規模の単一CO2市場を生み、CDRやインフラ投資を商業化するために必要な規模を確保するとの主張である。

政治的経緯と次のステップ

EUと英国は2025年5月に開かれた関係再構築のための首脳会合を経て、加盟国はカーボン市場リンク交渉の開始に向けた交渉マンデートを正式に承認した。双方は制度整合の意思を表明しているものの、技術的な完全統合には数年を要するとの見方も当局から示されている。

業界側の一致した働きかけは、こうした技術交渉を次回EU-UK首脳会合の議題前面に押し出し、資本がより法的に確実な市場へ流出するのを防ぐ狙いがある。

編集部の視点

本書簡は、2025年5月に合意済みのリンク路線に対する進捗督促であり、新たな政策の方向性を提示するものではない。業界側が技術交渉の前倒しを政治日程に乗せようとする働きかけの色彩が濃く、内容としては既定路線の確認にとどまる。

注視すべきは、制度整備の本丸が排出枠市場のリンクそのものではなく、CO2越境輸送・貯留の法的承認にある点である。ETSリンクとCCUS規制枠組みは制度的に別レイヤーであり、リンク交渉が前進してもCO2越境移動のガバナンスが自動的に解決するわけではない。欧州CCUSの投資判断を実際に左右するのは、後者の取極めがいつ確定するかという論点である。

参考:https://www.ccsassociation.org/resources/ccsa-open-letter-on-the-linkage-of-eu-and-uk-ets/