東京都、家庭系廃食用油のSAF原料化へ回収事業2件を採択

カーボンクレジット.jp 編集部

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東京都環境局は2026年6月4日、家庭から出る廃食用油を持続可能な航空燃料(SAF)の原料として活用するため、都と共同で回収を担う事業者2件を採択したと発表した。2050年までのCO2排出実質ゼロを掲げる「ゼロエミッション東京」と、資源循環への移行を進める「2050東京戦略」戦略20の一環と位置づける。

採択された事業者と都は今後、協定を締結したうえで回収事業を共同実施する。

採択された2件の回収事業

1件目は吉川油脂による事業で、スーパーやマンション管理会社など多様な企業と連携した回収拠点の構築、再利用可能なリターナブルボトルの導入によるプラスチック廃棄の抑制、SAF原料に適したISCC CORSIA認証に則した廃食用油リサイクルを柱とする。

2件目は日揮ホールディングス、コスモ石油、レボインターナショナルの3社による事業で、自治体・企業と連携した家庭系廃食用油の回収と国産SAF製造への利用、回収周知イベント、環境学習の実施を掲げる。

この3社は、廃食用油を原料とする国産SAFの量産を担う合同会社サファイア スカイ エナジー(SAFFAIRE SKY ENERGY)を共同で設立しており、コスモ石油堺製油所構内の製造設備は年約3万kLのSAF供給を見込む。今回の回収事業は、この国産SAFサプライチェーンへ家庭系原料を供給する位置づけにある。

家庭系廃食用油という原料の制約

国内の廃食用油の発生・回収量は年約45万トンとされ、その中心は飲食店や食品工場から出る事業系である。事業系は9割超が専門業者により回収され、配合飼料や石けん、燃料原料として再利用されており、近年はSAFやバイオディーゼルの原料として国内外で高値取引される競合資源となっている。

一方、家庭から出る廃食用油は年約10万トン発生するが、その大半は可燃ごみとして廃棄され、回収率は低い水準にとどまる。今回の採択は、この未活用の家庭系原料を回収ルートに乗せる狙いがある。

ただし、量的なインパクトは限定的である。

資源エネルギー庁の試算では、2030年の国内SAF需要は国内ジェット燃料使用量の10%に当たる約172万kLに上る。国内唯一の大規模製造設備でも供給見込みは年約3万kLにとどまり、家庭系廃食用油は全量を回収・燃料化できたとしても需要全体のごく一部を満たすにすぎない。都が世界陸上を契機に実施した家庭の油回収キャンペーンの実績は全回収所で約11,300Lであり、家庭系回収の現実的な規模感を示している。

編集部の視点

本件は国産SAFの原料基盤に家庭系という新たな供給源を組み込む取り組みであり、方向性は妥当である。ただし需要規模に照らせば、量的な実効性は現時点で限定的であり、象徴的施策の域にとどまる。

本件の価値は供給量よりも、公的主体の関与のもとで認証可能かつトレーサブルな国産原料サプライチェーンを回収段階から設計する構造面にある。家庭系原料の認証適合とMRVを組み込んだ回収モデルは、原料を輸入や事業系の競合に依存しない国産SAF原料基盤を構築する構造的試みとして評価できる。

参考:https://www.metro.tokyo.lg.jp/information/press/2026/06/2026060409