日本政府は2026年6月2日、二国間クレジット制度(JCM)において、パリ協定6条に沿ったクレジットである「国際的に移転される緩和成果(ITMOs)」をパラオ共和国の事業から発行した。日本国JCM登録簿の政府保有口座に計194トンが記録された。
JCMにおけるITMOsの発行は、2025年11月のタイ、同年12月のモルディブに続き、パラオが3か国目となる。
発行対象は2021年実施の太陽光4事業
発行の対象となったのは、いずれもパラオ国内で実施された小規模太陽光発電の4事業である。商用施設向けの2事業、学校向けの1事業、スーパーマーケットとホテルへの0.4MW屋根置き太陽光1事業から構成される。
4事業の発行量合計は446トンで、このうち日本政府が獲得したITMOs量が194トンとなる。
クレジットの発行対象期間はいずれも2021年であり、発行までに約5年を要した。合同委員会は2026年5月16日の電子決議で発行量を決定し、パラオ政府による国際移転の承認を経て発行に至った。
パリ協定6条の実務手続きが定着する段階
パラオは2014年、10か国目のJCMパートナーとしてMOCに署名した。現在のパートナー国は32か国に拡大し、世界全体で300件を超える事業が実施されている。
今回発行されたITMOsは、二重計上を防止するための「二国間クレジット制度(JCM)に係る相当調整の手続き」(2025年3月改定)に則り、2030年度を目標年度とする日本のNDC達成に向けてカウントされる。
3か国の発行事例を通じて、6条2項に基づく協力的アプローチの会計手続きが、実務として運用される段階に入った。
編集部の視点
パラオからの発行はJCMにおけるITMOs発行の3か国目にあたり、パリ協定6条の実施実績を着実に積み上げる事例と位置づけられる。一方で発行量は194トンにとどまり、NDC達成への定量的寄与という観点では象徴的な水準である。
本件の意義は数量よりも、相当調整を伴う6条クレジットの発行・国際移転・NDC会計という一連の手続きが、複数国で反復可能なかたちで定着しつつある点にある。タイ、モルディブ、パラオと事例が積み上がることで、制度運用の実務的な型が固まる。
日系企業にとっては、JCM事業の組成から相当調整を経たITMOs化までの道筋が実例で示された意味は大きい。300件超の事業基盤と整備の進む会計手続きは、6条を前提とした海外脱炭素事業を収益化する枠組みとして、参画判断の前提条件が整いつつあることを示している。
