Jain Irrigation Systems、インドに世界最大級のバイオ炭反応炉を稼働 除去系CDRクレジット創出へ

カーボンクレジット.jp 編集部

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ジェイン・イリゲーション・システムズ(Jain Irrigation Systems Ltd./JISL)が、インド・マハラシュトラ州ジャルガオンで産業規模のバイオ炭製造設備を稼働させた。単一ユニットの反応炉として世界最大級と位置づけられ、年間約20,000トンの農業・果実加工残渣を処理する。

ジェイン・イリゲーションは、バイオ炭の農地還元による土壌改良と、除去系CDRクレジットの創出という二つの収益源を見込む。クレジットは炭素除去レジストリのプロアース(Puro.earth)で認証手続きを進めている段階にある。

今回のジャルガオン設備は複数基計画の初号機であり、追加ユニットの開発がすでに進行している。

農業残渣を起点とする循環モデル

設備の処理能力は1日あたり50トン超で、低酸素環境で有機物を熱分解する。インドでは年間5億トンを超える農作物残渣が発生し、その多くが野焼き処理されてきた。同社はこの残渣をバイオ炭に転換し、農地へ還元する。

ジェイン・イリゲーションは1,000万人を超える農家と取引する灌漑事業の販売網を保有しており、生産したバイオ炭を農地まで届けるラストワンマイルの基盤を持つ。バイオ炭の物理的販売とCDRクレジット発行の双方から収益を得る構造である。

稼働発表後、同社の株価はインド市場の日中取引で最大13%上昇した。

数百年の炭素固定とその確度

バイオ炭は熱分解で炭素を安定した固体に変え、土壌中で数百年にわたり貯留するとされる。生物起源の原料を用いながら固定の永続性が比較的高い点で、生物起源炭素除去・貯留(BiCRS)のなかでも耐久性の高い手法に位置づけられる。

ただし、固定の永続性は原料、熱分解条件、施用先の土壌環境に依存する。

「数百年」という表現には方法論ごとの幅があり、一方で実際の固定年数や炭素固定量の算定をめぐっては検証手法の厳格性が品質を左右するとの指摘もある。プロアースでの認証取得は、その検証プロセスの途上にある。

野焼き代替と追加性

残渣の野焼きは大気汚染と排出の要因であり、これをバイオ炭化することで炭素の大気放出を回避する。同時に土壌の肥沃度と保水性を高め、化学肥料への依存を下げるコベネフィットを伴う。インド国家気候変動行動計画(NAPCC)の下での農業由来排出対策とも整合する。

もっとも、飼料、堆肥、バイオマス燃料といった野焼き以外の残渣利用が成立する地域では、バイオ炭化が追加的な炭素便益をもたらすかが論点となる。追加性の立証は方法論と地域条件に依存する。

編集部の視点

本件は、農業残渣を原料とする生物起源CDRを商業規模で確立した事例として位置づけられる。

大量の農業残渣と既存の農家流通網を併せ持つ事業者が、原料調達からバイオ炭の農地還元までを一体で運用できる点に構造的な意味がある。アジアの農業経済では、こうした垂直統合がバイオ炭CDRの規模化を左右する。

ただし、世界最大級という規模はあくまで処理する残渣量を指すものであり、実際に発行・検証されるCDRクレジットの量はこれより小さい。プロアースでの認証は途上にあり、クレジットの品質はその検証の厳格性に依存する。

設備規模そのものではなく、複数基展開を通じた検証済みクレジットの安定供給と単価の確保が、本事業のCDR市場における評価を左右する。

参考https://www.jains.com/Company/news/JISLNEWS02062026.htm