KBRがNorSAFの北欧最大級SAF・e-SAF拠点にPureSAF技術を供与

カーボンクレジット.jp 編集部

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米KBR(NYSE:KBR)は2026年5月28日、ラトビアのSAF事業者ノルサフ(NorSAF)が、北欧最大級となるSAF・e-SAF製造拠点に同社の独自技術PureSAFを採用したと発表した。年産能力は10万トン、生産開始は2030年を予定する。

拠点は欧州域内で調達する原料のみで稼働するクローズドループ型を掲げる。ノルサフは域外の化石燃料市場への依存低減と域内産業基盤の強化を前面に打ち出しており、本件は航空脱炭素の枠を超えてエネルギー安全保障の文脈で位置づけられている。

計画の概要と技術

PureSAFはスウェディッシュ・バイオフューエルズ(Swedish Biofuels)が開発し、KBRが商業展開の独占ライセンスを保有する技術である。先進バイオエタノールを原料とするSAFと、グリーン水素およびバイオ起源CO2から製造するe-SAFの双方を生産する。化石ジェット燃料に近い組成を持つ100%ドロップイン燃料であり、既存の航空機エンジンや給油インフラを改修せずに使用できる点を特徴とする。

ただし、現時点の認証は従来ジェット燃料への50%混合までにとどまる。100%ドロップイン使用の認証は、ASTMの承認手続きを経て2026年に欧州で取得される見通しとされるが、確定はしていない。

拠点はラトビアのリエパーヤ港に計画される。航空分野のアヴィア・ソリューションズ・グループ(Avia Solutions Group)が支援し、同社子会社のバルティック・グラウンド・サービシズ(Baltic Ground Services)がSAFの供給・流通の知見を担う。ノルサフによれば、生産される燃料のGHG排出量は従来のジェット燃料生産と比較して約83%削減される見込みである。

規制が支える需要の下限

欧州連合はReFuelEU航空規則により、域内空港で供給される航空燃料のSAF混合比率を段階的に引き上げる。2025年1月に発効した規則は、2030年に6%、2050年に70%の混合を義務づける。削減が困難なセクターとされる航空分野において、義務的な混合比率の設定は需要の下限を制度的に確保する役割を果たす。

エネルギー主権としての供給網内製化

ノルサフのヤーニス・キシエルス(Jānis Kisiels)取締役は、エネルギー主権はもはや経済目標にとどまらず、国家および地域の安全保障の問題だと述べる。欧州産原料を用いた大規模な100%ドロップイン燃料の生産を通じて、域外の化石燃料市場への依存を断つ自給的なエネルギー体制を構築するとの立場である。

再生可能電力、グリーン水素、回収したバイオ起源CO2を組み合わせるクローズドループ生産は、SAFを需要側の脱炭素手段としてだけでなく、供給網そのものの内製化とレジリエンスの観点から描き直す試みである。プロジェクト主導者は、リエパーヤ港を地域のSAFハブへと発展させ、ラトビアを欧州のSAFバリューチェーンの一翼に位置づける構想を示す。

一方で、プロジェクトの開発と建設は戦略パートナーの確保と追加投資に依存しており、生産開始時期や供給規模はなお流動的である。

編集部の視点

本件の核心は、航空脱炭素が排出削減策であると同時に、域外の化石市場への依存を断つエネルギー供給網の主権問題として組み替えられている点にある。

欧州産原料のみで稼働するクローズドループ生産という設計は、SAFを燃料調達課題ではなく産業レジリエンスへの投資として描き直す。ReFuelEU航空規則の混合義務が需要の下限を制度的に支えるなか、北欧最大級の生産能力を域内に確保する構想は、欧州SAF供給網の地理的再編における起点として位置づけられる。

参考https://www.kbr.com/en/insights-news/press-release/kbrs-puresafr-technology-selected-northern-europes-largest-saf-and-e-saf-plant-norsaf