東レがバイオガス精製の除湿コストを70%削減 「オールカーボンCO2分離膜」の実証に成功

村山 大翔

村山 大翔

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東レは2026年1月、大阪府内の下水処理施設において実施した「オールカーボンCO2・メタン分離膜」による1年間の実証試験の結果、バイオガス精製に伴う除湿コストを従来技術比で約70%削減したと発表した。

この新技術は、水分による劣化が課題だった従来の膜分離方式の弱点を克服し、バイオガスの高度利用を加速させる。世界的な脱炭素化の進展を背景に、高効率なガス分離技術の需要が高まるなか、同社は炭素捕獲・利用・貯蔵(CCUS)分野への応用も視野に入れる。

本プロジェクトは、有機廃棄物の発酵により発生するバイオガスを、CO2と水分を除去して純度の高いバイオメタンへと精製する工程で行われた。従来のポリマー膜やゼオライト膜を用いたシステムでは、膜が水分に接触すると性能が低下するため、吸着剤を用いた高コストな事前乾燥工程が不可欠であった。これに対し、東レが開発した全炭素製の分離膜は、湿潤環境下でも高い化学的安定性と分離性能を維持できるため、CO2と水分を同時に除去し、システム全体の簡素化と運用費の大幅な抑制を両立させた。

イメージ図:カーボンクレジット.jp作成

東レは今回の成果について、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成を受けた開発の一環であると説明した。同社は「本技術はバイオガスの高純度化にとどまらず、天然ガス精製や産業排ガスからのCO2分離など、幅広いガス処理セクターにおける経済性と拡張性を向上させる可能性がある」と指摘した。

今回の実証データに基づき、東レはガス分離膜モジュールの軽量化とコンパクト化をさらに進める。

同社は今後、2050年のカーボンニュートラル実現に向けた鍵となる技術として、CCUS市場におけるプレゼンス拡大と、クリーンエネルギーシステムの構築に寄与する方針だ。

今回の東レによる実証成功は、日本のカーボンクレジット市場、特にJ-クレジットにおける「バイオマス由来燃料への転換」プロジェクトの収益性を劇的に改善させる可能性がある。

これまでバイオガス精製は、精製コストの高さが中小規模の自治体や事業者にとって大きな参入障壁となっていた。

除湿コストの70%削減という数字は、プロジェクトの内部収益率(IRR)を押し上げ、炭素除去(CDR)技術としてのバイオメタン活用の経済的合理性を強めるものだ。

今後は、この分離膜が産業排ガスからの直接回収に応用されることで、より安価な「CCUS由来のカーボンクレジット」の供給源となるかが注目される。

参考:https://www.toray.com/news/article.html?contentId=lp0w3gt5